ケース4:ゆうあいホスピタル(徳島県東みよし町)
薬剤識別・報告書業務を強力に支援。製品化も視野に

ゆうあいホスピタルの木村敦氏
ゆうあいホスピタルの木村敦氏

 徳島県東みよし町のゆうあいホスピタル(院長:多田克氏、220床)では、FileMakerを利用した薬剤識別支援システム(DISS)を運用している。開発したのは、同病院の薬剤師で、徳島大学大学院医学教育部で薬剤識別の研究をしている木村敦氏。

 「患者さんの持参薬管理業務は、薬剤識別や識別報告書作成など非常に手間がかかります。錠剤の識別ではマスターデータがあるものの、色の判別と表記が非常にわかりにくく、識別検索をより難しくしています。薬剤識別、持参薬管理業務を効率化し、薬剤師の負担軽減を目的にDISSを開発、改良を続けています」(木村氏)と開発意図を説明する。最初に開発したDISS α版から改良・進化を遂げ、画期的な薬剤識別支援システムが完成しつつある。

 これまでに開発したDISSにおける検索の仕方を、ユーザーのアクセスログから検証すると、最初に検索窓に識別コードなどの検索キーを入力し、次に錠剤かカプセルの選択、続いてカラーパレットから色を選択する傾向が非常に強いという。「錠剤かカプセルかのボタン選択は絞り込みの効果は低いですが、ユーザーのほとんどが“癖”として実行しています。さまざまな絞り込み検索の機能を実装していましたが、最新のバージョンでは(1)検索キーの入力、(2)カラーパレットによる色選択、(3)錠剤の形状選択の3項目に検索方法を絞りました」(木村氏)と検索精度・速度の向上を図った。

 また、これまでのシステムでは薬剤識別のみを支援するものであったが、報告書作成業務につなげる機能も実装した。先の3つの方法で絞り込み検索された薬剤が写真表示された後、用法を朝・昼・夕・寝(就寝前)から選択し、それぞれの欄に表示できるようにした。「識別検索した薬剤を視覚的に確かめながら、用法も視覚的に処理できます。あとは服用数を入力して印刷ボタンを押せば報告書が簡単に作成でき、効率的に業務を遂行できます」(木村氏)。これら薬剤識別・報告書作成の作業は、FileMaker GoをインストールしたiPadで運用できる。

第4回J-SUMMITS全国集会の会場内の様子
第4回J-SUMMITS全国集会の会場内の様子

 開発した薬剤識別支援システムは、まず同氏が加盟している日本ユーザーメード医療IT研究会(J-SUMMITS)幹事メンバーの医療機関で試用し、意見やコメントを反映。配布できる状態に仕上げたうえで、J-SUMMITS会員に利用してもらい、さらに意見をJ-SUMMITS内で集約する方針だ。また、病院情報システムの基幹である電子カルテベンダーに対して中立的な立場にある企業と協力して、病院内での持参薬識別支援システムや薬剤識別エンジンを製品版としても開発する計画で、「J-SUMMITSプロデュースの製品第1号となる予定」(J-SUMMITS代表、名古屋大学医学部附属病院メディカルITセンター長 吉田茂氏)だという。


※掲載した事例は、第13回日本クリニカルパス学会学術集会(2012年12月7、8日)のランチョンセミナー(共催:ファイルメーカー)および同時開催された第4回J-SUMMITS全国集会で発表された内容をまとめたものです。