写真1●病院内自律搬送ロボットを開発したホスピタルアシストロボット<HOSPI>チームリーダーの北野幸彦氏
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写真2●レーザー光測距式センサーで車椅子の患者を検知し、回避走行するHOSPI
写真2●レーザー光測距式センサーで車椅子の患者を検知し、回避走行するHOSPI
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写真3●HOSPIの顔の部分がタッチパネルになっており、搬送先の指定などを行う。胴体正面にカメラがあり、走行映像を監視モニターに表示。胴体裏側の自動ロック扉の中に搬送薬品のトレーなどを収納する。
写真3●HOSPIの顔の部分がタッチパネルになっており、搬送先の指定などを行う。胴体正面にカメラがあり、走行映像を監視モニターに表示。胴体裏側の自動ロック扉の中に搬送薬品のトレーなどを収納する。
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 東京ビッグサイトで開催された国際モダンホスピタルショウ2013(7月17~19日)で、パナソニック新規事業推進プロジェクト ホスピタルアシストロボットチームの北野幸彦氏が、病院内自律搬送ロボットシステム「HOSPI」を紹介した。同ロボットは松下記念病院の要望で開発されたもので、これまで同病院と埼玉医科大学病院で実証運用が行われてきた。その成果を受けて、今年中に正式販売が開始される予定という。

 病院内自律搬送ロボットシステム開発は、松下記念病院からの2つの課題解決の要望に端を発している。(1)院内における薬品や検体などの搬送が看護師や検査技師の本業を妨げていること、(2)電子カルテシステム導入により搬送する物が減っているはずなのに、従来の搬送システムのエアーシューター(気送管)やバーチカルコンベアの維持費が依然として高止まりになっていること。

 「ロボットを作る自信はある。しかし、病院に物販搬送のためのロボットを導入していいのか、導入後安全性をどう確保するのか、看護師などのスタッフが運用できるのか、懸念や不安が大きかった」と北野氏。そこで、現場のニーズに基づいて病院スタッフとメーカーで、コンセプトづくりから一緒に検討したという。

 「患者をはじめとする来院者、職員すべてにロボットがいいものだと受け入れられることと、笑顔があふれる未来の病院に相応しいロボットであることが重要。ロボットの存在が“ホスピタリティ”でなくてはならない。優しさを持った誰からも受け入れられるデザインで、機能も信頼・迅速・安全を重視というコンセプトで開発した」と説明した。

 HOSPIの特徴は、レールやガイドテープが不要で、病院内の曲がりくねった廊下でも自律走行して目的の場所に到達すること。さらに、人や器具にぶつからない回避行動がとれ、エレベーターにも自動乗降して多層階に対応できることだ。

 具体的に実装されている機能的な特徴としては、以下の点が挙げられる。
(1)薬剤部で利用する際の薬剤トレーセットはスタッフのIDカードによって自動ロック扉を施錠し、受け取る側もIDカードで解錠して取り出す
(2)搬送先はタッチパネルで指示
(3)病院内地図情報を基に自律走行し、付属したカメラの映像が送信されるので、走行監視が可能
(4)走行環境の明るさに左右されず、夜間でも薬剤搬送にも対応
(5)患者、車椅子、ストレッチャーなどに出会ってもセンサーが検知し、安全に回避してすれ違う
(6)エレベーター管理システムと連動し、搬送用エレベーターを自律コントロールして別の階に移動可能
(7)ナースステーションなどに到着すると、天井などに設置した案内灯が点滅して通知する

 HOSPIは、無線LANを通じて院内LANにつながっている。そのためエレベーターの自動乗降は、院内LANに接続されたエレベーター制御ユニットに信号を送信して行う。「走行中に無線LANで信号を送るので、エレベーターホールに到着したときに、エレベーターのカゴもすでに到着している。それが、搬送時間の短縮に寄与している」(北野氏)。