釜石ファミリークリニック院長の寺田尚弘氏
釜石ファミリークリニック院長の寺田尚弘氏
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患者情報統合システムの概要図
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在宅患者の訪問にはタブレットを持参
在宅患者の訪問にはタブレットを持参
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 11月21~23日に神戸市で開催された第33回医療情報学連合大会(第14回日本医療情報学会学術大会)で、釜石ファミリークリニック院長の寺田尚弘氏が、タブレットで患者情報を閲覧できる患者情報統合システムを活用して、被災地で在宅診療を実施しているケースについて説明した。

 釜石ファミリークリニックでは、2012年10月から富士ゼロックスの患者情報統合システムを利用している。同クリニックでは、5人の医師が外来診療と訪問診療を交代で実施している。寺田氏は、患者情報統合システムを導入した目的について、「24時間365日の対応が必要な在宅診療では、時間と場所を選ばず、カルテ情報だけでなく患者に関する多岐にわたる情報を集約し、常に利用できる状態に保つシステムが必要と考えた」と説明した。

 このシステムの特徴として、(1)QRコードやスキャナーを利用して紙と電子の診療記録を一元管理、時間や場所を選ばずタブレット端末で患者に関する情報を閲覧できる、(2)記録を適切な文書種で分類してPCやタブレットで簡易に閲覧できる、(3)日付情報を付与することで患者情報を時系列的に表示できる、などの項目を挙げた。

 利用方法としては、以下の形態を例として挙げた。当日訪問する患者の情報をタブレットにダウンロードして持ち運び、必要に応じて患者宅で閲覧する(現場でのダウンロードも可能)。訪問先で手書きで作成したQRコード付き診療記録・帳票は、帰院後に複合機でスキャンし、電子文書としてシステムに登録する。夜間に緊急コールがあった場合は、自宅にいながらにしてタブレットで情報を参照する。

 釜石ファミリークリニックでは、2013年9月末で、のべ患者数450人、文書登録数が約2万5000に到達した。利用形態を調査したところ、院外ダウンロードは、22~翌6時の深夜と18~21時の夜間の件数が多く、中でも22時台が非常に多いこと、土日の1日平均ダウンロード数は平日の倍近くあることが分かった。また職員にアンケートを実施したところ、医師からは低評価はほとんどなく、平日日中の臨時往診での患者近況の把握、カルテのハンドリンクなどの項目は特に評価が高かった。看護師の回答は、夜間・休日電話当番に関する業務での評価が高い一方で、訪問前準備や訪問後処理などの作業で評価が低かったという。

 寺田氏は「複数の文書種を時系列で閲覧できるため、刻々と変化する患者の全体像を立体的に把握できるようになった。在宅医療などに携わる職種の労力を、大きく軽減できる可能性がある。それは結果的に、患者に安心と安全を与えることにつながる」とシステムに対する期待を述べた。