九州大学病院心臓血管外科診療講師 中島淳博氏
九州大学病院心臓血管外科診療講師 中島淳博氏
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慶應義塾大学医学部放射線診断科助教 橋本正弘氏
慶應義塾大学医学部放射線診断科助教 橋本正弘氏
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 11月21~23日に神戸市で開催された第33回医療情報学連合大会(第14回日本医療情報学会学術大会)では、症例登録事業に関する発表があった。様々な学会で実施している事業、全国の手術・治療実績を登録するNational Clinical Database(NCD)における登録作業の効率化、登録情報の精度向上に目的としたシステム化、などのテーマで議論が交わされた。

 現状では、症例登録のほとんどが手作業でのWebブラウザー(インターネット)への登録作業で行われているため、専門医や代行する診療情報管理士などの負担が大きい。また、登録項目は多岐、詳細なものも多く、登録漏れやミスなどによるデータ精度の低下という問題もある。

発表された研究例は、病院情報システム(HIS)や部門システムから登録情報を効率的に抽出し、Web登録作業を簡潔化することにより、専門医(または診療録管理士)の負担を軽減するもの。

 九州大学病院心臓血管外科の中島淳博氏は、電子カルテシステム上に構築したNCD入力システムについて発表した。同病院では富士通の電子カルテシステム「HOPE/EGMAIN-GX」を運用しており、eXChartという機能を利用してNCD入力管理システムを構築。各専門医と実際の登録作業を行う診療録管理士のワークフロー管理、コミュニケーション機能などを実装した。

 2011年1月から事業スタートしたNCDは、一般外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児科外科など、外科系専門医制度と連携した症例データベース。各学会で行われてきた症例登録事業を統合したもので、各学会の手術疾患別に多種の入力フォーム(CRF=Case Report Form)がある。例えば、消化器共通CRFでは114項目、消化器系医療水準CRFでは170項目、心臓外科CRFでは330項目など多種多様。それらを、手作業でWebに登録しなければならない。

 「全症例登録が原則であり、登録作業は臨床専門医の大きな負担になっている。Web登録する際に、電子カルテ内の情報を抽出するにも課題が多い。登録作業が繁雑なため、入力漏れが多々あり、それを監査する仕組みもない。また、NCDのデータはこちらでダウンロードすることができず、二次利用が困難」と中島氏はNCD登録の課題を指摘。医師・登録スタッフの業務軽減・入力時間短縮、登録データ精度の向上、入力スタッフ間の業務連携の円滑化、入力データの二次利用促進を目的に、NCD登録のシステム化に取り組んだ。