設計に本来、必要なコストを認識せよ

加藤 こうした覚悟が問われる設備を、20年間使うということに対する意識を、社会がどこまで認識しているのだろうか。コストの議論ばかりに、注目が集まりすぎている。

吉富 わたしは、システムの材料費や施工費にしか目が向いていない傾向に注目している。本当に注目されるべきなのは、設計費、中でも構造設計の経費なのだと思う。

 例えば、いま紹介した、架台ごと屋根から外れて落下した事故が起きた住宅用の太陽光発電システムの施工費は、おそらく20万円くらい、太陽電池モジュールなど主な資材の調達価格は、おそらく100万円程度だろう。

 しかし、本来、設計時に、実際にかかる風圧力のデータを得るためには、風洞実験をして風力係数を求める必要がある。今回紹介した事故現場に適当な風洞実験のデータについては、ある建築学会員が数千万円を投じて実施して得たデータを公開してくれているために、例えば、わたしがこうした事故の原因を探る際に活用できている。

 このデータが公開されていなければ、自分たちで風洞実験をしなければならない。この場合には当然、設計費の一部として、その数千万円を加えた額が、太陽光発電システムのコストとなる。現在の太陽光発電システムは、太陽電池モジュール価格の低下のおかげで材料の手配には懐が痛まなくなった。しかし、設計コストは全く低下してはいないし、設計に必要な労力がこれから減ることはない。このことは、市場からは十分に認識されていない。