洗練されたUIと精度向上のため整合性チェックロジックが特徴

 一方、大阪府立成人病センターで開発・提供してきたFileMaker版のがん患者登録システムは、大阪府のがん拠点診療連携病院の多くで利用され続けている。その最新FileMaker Proへの移行などのメンテナンス作業を引き受けたのが、国立病院機構 大阪医療センターの産科医長 岡垣篤彦氏。同センターの院内がん登録システムとして運用すると同時に、同氏が近畿支部長を務める「ユーザーメード医療IT研究会」(J-SUMMITS)を通して提供している。その背景・動機を岡垣氏は次のように述べている。

大阪医療センター産科医長の岡垣篤彦氏

 「院内がん登録は基本的にがん診療連携拠点病院のように大規模病院が対象になっており、がん登録制度への対応とともに自院でのがん患者の動向把握、がん治療の成果向上に役立てています。FileMakerによるがん患者登録システムは、そうした大規模病院だけでなく、小規模病院が地域がん登録の精度向上に寄与できるシステムとして、比較的導入・運用のハードルが低いシステムです。特に味木先生が開発したシステムは、入力内容の整合性チェックのロジックがしっかりしており、容易で効率的な入力作業を実現する洗練されたユーザーインターフェース(UI)を持っています」(岡垣氏)

 入力・登録のユーザーインターフェースは、患者基本情報や診断日などのキーボード入力以外は、項目選択による容易な入力が可能。特に腫瘍情報の入力では、器官名を選択すると、それに応じた部位や詳細部位が次々と表示されるので、効率的でミスのない入力ができる。また、入力終了後に整合性チェックのためのボタンをクリックすると、修正すべき項目のアラートが表示されるなど、登録間違いをなくすための機能が搭載されている。

がん登録のメイン画面。入力漏れや内容に矛盾がないと「OK」と表示され、登録可能になる。
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がん登録のメイン画面。入力漏れや内容に矛盾がないと「OK」と表示され、登録可能になる。
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多くのデータは項目選択で入力可能。器官名を選択すると、それに応じた部位、詳細部位などの候補が順次表示される。
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 「FileMaker版院内がん登録システムの優れている点は、画面の美しさと画面展開のストレスの少なさ、そしてフレキシビリティーです。当院の仕組みでは、フレキシビリティーを活かして、記載に必要なデータを同一画面上からクリック1つで呼び出せるように作っています」と岡垣氏は説明する。また、UICC TNM分類などが更新された場合などに際し、迅速に対応できる「開発・改修のスピード感はFileMakerの真骨頂」だと強調する。

 同センターの病院情報システムは、FileMakerシステムを入力インターフェースとして活用し、電子カルテシステム(富士通HOPE/EGMAIN-GX)と連携してカルテ情報を書き込む仕組みになっている。電子カルテデータはFileMakerシステムと同期しているため、FileMaker版院内がん登録システムへのデータ抽出・入力はほとんど自動化されている。

 岡垣氏は院内がん登録システムについて、「それぞれの病院の事情に合わせて運用できるシステムの選択肢があるべきです。標準登録項目や整合性チェックなどがん登録の精度を担保したシステムの1つとして、FileMaker版院内がん登録システムは非常に価値の高いシステムであり、多くの医療機関に提供するに値するシステムだと思います」と述べている。


■病院概要
名称:地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター
住所:大阪市東成区中道1-3-3
病床数:一般病床500床
特定機能病院/ 臨床研修病院/都道府県がん診療連携拠点病院
Webサイト(がん予防情報センター):http://www.mc.pref.osaka.jp/ocr/

名称:独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター
住所:大阪市中央区法円坂2-1-14
病床数:658床(運用病床)
広域災害拠点病院/地域医療支援病院/大阪府がん診療拠点病院/がん診療連携拠点病院
Webサイト:http://www.onh.go.jp/
導入システム:ファイルメーカー「FileMaker Server」「FileMaker Pro」