癒しや親しみを与える目的で

 羊やヤギを、除草を目的に導入するメガソーラーが増えてきたが、実は日本毛織の場合、最大の目的は除草ではなかったという。

 ガラスでカバーした太陽光パネルは、どうしても硬質な印象を与える。それが5万枚という規模で並ぶ。近隣の住民に対して、いかに息が詰まるような、無機質な印象を与えないようにするのか——日本毛織ではこの命題に取り組んだ。ゴルフ場時代の緑を多く残したり(図3)、羊を放牧したりしたのは、癒しや親しみを与えることを狙ったものである。羊は、羊毛紡織を祖業とする日本毛織のマスコット・キャラクターでもあり、広報の役割も担っている。

図3●ゴルフ場の緑や起伏、池はそのまま残した
(出所:日経BP)
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 羊は3頭おり、メガソーラーの敷地約22万m2のうち、約1万5000m2の区域に放牧している。この約1万5000m2の区域が、ゴルフ場時代の緑を多く残している区域である。残りの区域には、防草用のシートを敷き詰めている。

 羊の導入に先立ち、2013年5~6月に、太陽光パネルに乗るなどの悪さをしないかどうか、配線を噛み切ったりしないかなどを検証した。その結果、問題ないと判断し、発電を開始した2013年10月から、六甲山牧場(兵庫県神戸市)から譲り受けた3頭を放牧し始めた。羊の管理は、子会社のニッケ不動産に委託。飼育員は、地元から採用した。

 注目される除草の効果は、「想像していた以上によく食べて、目に見えて太ってきている」(ニッケ不動産の飼育員)という(図4)。ただ、草の中には、食べたがらない種類があったり、背より高い木の葉を食べてみたり、嗜好性が強いことが分かってきた。

図4●あっという間に丸々と太ったという3頭の羊
(出所:日経BP)
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