「WATATUMI mobile」をナースセンターで利用しているところ
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久留米大学病院 病院情報システム室の下川忠弘氏
久留米大学病院 病院情報システム室の下川忠弘氏
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「WATATUMI mobile」の画面はのぞき見できないように対策を施してある
「WATATUMI mobile」の画面はのぞき見できないように対策を施してある
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「WATATUMI mobile」の画面例(インターシステムズ提供)
「WATATUMI mobile」の画面例(インターシステムズ提供)
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BCP時の相互バックアップデータの流れ(第33回医療情報学連合大会で撮影)
BCP時の相互バックアップデータの流れ(第33回医療情報学連合大会で撮影)
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 久留米大学病院は、ここ数年ITソリューションを次々導入して、病院の業務効率化を進める様々な施策を実現。電子カルテ未導入の状態から、国内でも最先端の“IT活用病院”に変身した。ここでは、同病院が実現した「携帯端末でのカルテ参照」「BCP面での相互バックアップ」「メッセージ・ウエアハウス構築」などについて紹介する。

電子カルテと携帯端末導入

 久留米大学病院では、2013年6月から、電子カルテシステム「WATATUMI(わたつみ)」と診療業務用携帯端末「WATATUMI mobile」のフル機能での運用を開始した。

 「WATATUMI」(旧名IZAMAMI)は、コア・クリエイトシステムが提供する、データの高速アクセスを可能にした電子カルテシステムで、3秒以内の高速データアクセスを保証している。インターシステムズのオブジェクトデータベース「InterSystems CACHE(キャシエ)」を基盤技術として使用し、クリニカルパスに対応している。「WATATUMI mobile」は、Android対応の診療業務端末システムで、「WATATUMI」と連携している。スマートフォンによる電子カルテの参照、バイタル情報の入力、オ―ダ―の実施などが可能になる。看護師用に630台、医師用に300台の端末を導入して、本格運用をスタートしている。

 加えて2013年10月からは、診療記録の完全電子化保存を開始した。e文書法に基づいて、医師法に定める診療録、診療諸記録及び関連の記録について、電子データでの保存(スキャンなどによる電子化も含む)したものを、原本と見なすことを意味する。これまで、紙カルテと電子カルテとの併用期間が続いていたが、10月1日以降に発生した診療記録は全て電子媒体で保存しているという。

 これに続いて久留米大学病院は、災害時の対策として宮崎大学病院との電子カルテデータの相互バックアップと、スマートフォンによる電子カルテ参照を可能にするシステムの構築を進めている。

 久留米大学病院 病院情報システム室の下川忠弘氏は、第33回医療情報学連合大会のシンポジウムで「大学病院同士の相互バックアップ及び災害時のスマートフォンによる参照」と題して発表。「災害時に電子カルテシステムの継続運用するために考慮すべきことは、電子カルテデータの保存性と見読性を確保することと、ライフライン復旧を考慮したデータ参照の仕組みを構築することが大切」と指摘した。

 そのために、遠隔地の宮崎大学病院にバックアップシステムを設置。災害発生時に院内サーバーが使用できなくなった場合、バックアップしたデータを用いて電子カルテシステムの最小限の機能(参照機能)によって、運用を継続できるようにするという。

 久留米大学病院が宮崎大学病院と災害対策相互バックアップを行う理由は、両大学とも同じ電子カルテシステム(コア・クリエイトシステムのWATATUMI)を導入していること。加えて、電子カルテシステムを利用した大学院教育カリキュラムなどの共同策定や、共同で経営分析などの施策を実施しようとしているという背景がある。