基幹システムとデータ連携するFileMakerによる院内業務支援システム構築

 鶴見西口病院が透析業務を中心とした院内業務支援システムをFileMakerで構築したのは、2012年10月。それ以前は血液透析にかかわる患者情報、血液検査データ、透析記録など、すべて紙の書類で管理していた。患者データの転記をはじめ手書き作業に時間がかかり、また透析カルテを探し出すにも手間がかかっていた。患者情報をデータベース化することでデータ管理、情報検索、容易な書類作成などを可能にすべくFileMakerを利用した。

医療情報システム担当の野村和正氏

 一方、グループのシステム開発部門では、傘下の透析専門施設の患者情報などを統括管理する基幹システムの構築を2年前から進めてきた。鶴見西口病院が稼動させたFileMaker院内業務支援システムは、この基幹システムと連携して患者基本情報や透析条件データなどを取り込み、運用する仕組みである。

 「基幹システムは各施設が持つ医事システムや事務系システムと連携して、グループで共通管理すべき情報を扱います。現在、予約システムが稼働しており、今年度内に処方システムと検査システムを、来年度以降に患者情報管理システムや外来に特化した電子カルテシステムを順次稼働する計画です。透析業務で利用するシステムは各施設のニーズが異なり、基幹システムでは対応しきれない部分があります。現場の要求を満たす業務支援システムは、機能変更・拡張も頻繁でスピーディーな対応も求められるので、比較的容易でコストを抑えたシステム開発を実現するため、FileMakerで構築しようという方針でシステム整備を進めているところ」(医療情報システム担当 野村和正氏)という。

臨床工学技士長の吉田雄一郎氏

 基幹システムとデータ連携するFileMaker院内業務支援システムを構築したのは、臨床工学技士長の吉田雄一郎氏だ。同氏は以前に勤務していた同グループに属する他の透析専門クリニックで、8年ほど前からFileMakerを利用して透析患者情報管理システムを開発、スタンドアローンで運用してきた。昨年10月に鶴見西口病院に着任すると同時に、以前のシステムのレイアウト変更や機能改修を重ね、基幹システムとのデータ連携を図って、院内業務支援システムを構築した。

FileMakerで構築した院内業務支援システムのメニュー画面
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 「以前に勤務していたクリニックでは、メーカー製の透析管理システムを導入していました。透析装置とリンクする機能があるのに加えて、患者さんの基本情報や透析スケジュール管理、透析条件作成、透析記録管理などが可能ですが、パッケージが非常に高額であるという問題があります」と吉田氏は説明する。「透析装置と連携した透析条件の設定や透析中の監視、体重計のデータ取り込みなどの機能を除けば、FileMakerで患者情報の一元管理は可能。現場の要望に沿った使いやすい操作やレイアウト、あるいは帳票作成など、コストをかけずにスピーディーな開発ができる優位性がFileMakerにあります」(吉田氏)と、院内業務支援システムにFileMakerを利用した動機を話す。