佐渡島の地域医療連携を支える「さどひまわりネット」。このシステム構築プロジェクトを現地で主導したのは、入社2年目(26歳)の若手技術者から53歳のベテラン技術者まで、男性11人、女性1人で構成されたプロジェクトチームだ。

 東京都心から佐渡島までは、新幹線と高速船を乗り継いで片道4時間はかかる。プロジェクト開始当初は短期出張でしのいでいたが、佳境に入った2013年1月から3月末までの3カ月間は、プロジェクトメンバー全員、佐渡島に“住み込み”で作業を実施した。

 地方でのシステム構築プロジェクトの場合、会社が短期賃貸マンションやビジネスホテルを手配するのが一般的だ。ところが、佐渡島にはそういった施設はほとんどない。一人暮らし用のアパートはあっても、短期契約はできないものがほとんどだ。

写真1●プロジェクトメンバーが滞在したシェアハウス
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 では、どうしたのか。プロジェクトメンバーは佐渡島で、貴重な体験をすることになる。会社が戸建て住宅を複数借り上げ、最大3人が一つ屋根の下で寝食を共にすることになったのだ。「シェアハウス」(いわば合宿所)での生活だ(写真1)。工事関係者などの宿泊施設として、ある地元のホテル事業者が所有していた。「合宿生活になると分かったとき、メンバーが上手くやっていけるか不安だった」。プロジェクトリーダーを務めた日本ユニシス ヘルスケアサービス部の原田一馬第一室長は振り返る。

 だが、その不安はすぐに解消した。共同生活を通して、急速にチームワークが醸成されていったからだ。寝食を共にしていれば、メンバーの性格はお互いに分かってくる。その結果、「相手の気持ちも考えつつ、仕事のキャッチボールができるようになった」(同)。言い争いの一つや二つはありそうだが、「そういったことはなかった。適応力と協調性のあるメンバーに恵まれたことが大きい」と原田室長は語る。

 システム構築プロジェクトの裏側で、メンバーはどんな生活をしていたのか。少しだけ紹介しよう。

極寒での共同生活、鍋パーティで親睦を深める

写真2●ある日の夕食
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 佐渡島の冬は寒い。日が暮れると気温は0度を下回る。日中でも、最高気温が5度を上回る日はほとんどない。さらに、毎日のように北風が吹き荒れる。「職場から家に帰ると、ドアが凍ってて中に入れなかった。やっとの思いで家に入ったと思ったら、今度は水道管が凍っていてお湯がでない。本当に困った」と、プロジェクトメンバーの一人は当時の苦労を語る。

 食生活も変わった。コンビニエンスストア「セーブオン」はあるものの、徒歩でいける距離にはない。そのため、自炊する機会が増えた(写真2)。週末になると複数のメンバーが車に同乗し、スーパーに買い出しに行ったという。冬は海が荒れるため、悪天候が続くと物資の補給が止まる。「お店から商品がほとんど無くなったときは、正直言って、このまま生活し続けられるのか、と焦った」こともあったという。

 そういう生活の中で、メンバーが楽しみにしていたイベントの一つが「鍋パーティ」だ。それぞれの家から食材や皿、椅子などを持ち寄って、みんなで鍋を囲んだ。プロジェクトメンバーの一人は、「寒い季節のあの鍋は、心身ともに温まった」と語る。誕生日パーティも開いたこともあった。こうした共同生活を通して、プロジェクトメンバーは一体感を増していった。