パネルは東芝製と韓国ハンファ製、パワコンはTMEIC製を採用

 九電工のような総合設備業にとって、メガソーラーの利点は、大型の建築物などに比べて、短期間で完成して顧客に引き渡せること、建設における細やかな対応が限られていることなどである。

 例えば、1MWクラスの太陽光発電所の場合、契約から建設に向けた準備、竣工まで、約半年間で顧客に引き渡せる。発電システムを設置する実際の工期は約3カ月で済む。

 これに対して、受注額が5~6億円の大型の建築物では、1年半といった期間を要することが多い。また、天井の工夫や照明器具の配置など、それぞれの建築物に合わせたきめ細かな対応が生じてくる。

 このため、メガソーラーの担当者は、同じ期間で、より多くの案件の建設に関わることができる。

――メガソーラーの建設ラッシュの中で、太陽光パネルの納入が間に合わず、工期が延びてしまうようなことはないのか。

本松 太陽光パネルや関連機器・部材については、期日通りに納入されそうな企業の製品を採用している。太陽光パネルでは、需要が国内メーカー品の供給量を大きく上回っているために、特に、シャープ、京セラ、三菱電機、ソーラーフロンティアの製品を、EPCサービスが所望する量と期日で入手することは、難しいと認識している。

 そこで、われわれは東芝製と、韓国ハンファグループ製の太陽光パネルを採用している。東芝製の太陽光パネルは、米サンパワー社からOEM(相手先ブランドによる生産)供給されたものだが、倒産リスクの低さをはじめとする企業としての安定感、絶縁不良などがロット単位で発生した場合などの対応力に利点がある。

――佐賀県武雄市に発電事業者として建設した2カ所のメガソーラーともハンファグループ製だった。

本松 武雄市のメガソーラーは、九電工の太陽光発電事業の先駆けとなった発電所である。武雄市は、樋渡啓祐市長が先頭に立って、市民病院や図書館の運営を企業に委託するなど、行政の先進的な取り組みで知られている。再生可能エネルギーの導入でもこうした姿勢で取り組んでおり、どうしても手がけたい案件だった。

 その中で、当時の為替レートが現在より円高だったこともあり、海外製と日本製では1kWあたり約3万円の価格差があった。そこでハンファグループ製の太陽光パネルを採用した。

 ハンファグループは、韓国の大手火薬メーカーを中核とする財閥グループで、企業としての信頼感がある上、太陽光パネルの品質や保証も採用に値するものだった。

 また、営業戦略上、太陽光パネルを低コスト化できる選択肢が必要だった。例えば、太陽光パネルのコストを下げることで、土地の賃料を地主と折り合える額まで引き上げるといったことが可能になる。

 武雄市のメガソーラーから始まったハンファグループとの関係では、新たな成果が生まれている。ハンファグループが発電事業者となり、大分県杵築市に建設するメガソーラーのEPCサービスを九電工が受注した。受注額は約39億円である。

――パワーコンディショナー(PCS)の選定について、ポイントにしていることは?

本松 メガクラスの大規模な太陽光発電所では、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用し、京セラを中心に建設した一部でドイツSMAソーラーテクノロジー製を使っている。海外製では、米GE(ゼネラル・エレクトリック)製やスイスABB製の1000V対応機などにも魅力を感じており、採用を検討している。

 ただし、海外製については懸念もある。技術的な問題が生じた際に、技術者が日本に在住しておらず、本国でしか対応できないといった事態である。また、日本に在庫を用意している以外の特殊な部品に問題が生じた際の対応など、未知数な面が多いことである。

――PCSでは、そうした懸念を抱くような故障が起こり得るということなのか。

本松 PCSの場合、あり得ると考えている。SMA製で、まだそこまで致命的なトラブルは経験していないが、TMEICの場合には、日本に技術者がおり、顔を見ながらすぐに対応してもらうことができている。

 例えば、連系している電力系統網が落雷などで瞬間的に停電すると、系統側から通常とは違うルートで、通常とは異なる電圧の電流がPCSに流れるために、PCSが異常と判断して自動停止する場合が多い。この場合、PCSのリレーの設定を修正するといった対応を迅速にできるかどうかが問われてくる。