不良率をPPM単位まで下げる

 大きなガラス基板に薄膜を形成する生産プロセスは、薄膜など均質化することが難しく、歩留まりが上がらないことが課題になりやすい。掛川工場長は、「変換効率と生産性の向上が両立できる生産プロセスを考案し、生産規模をスケールアップするごとに段階的にプロセスに導入してきた。品質検査を常に生産プロセスにフィードバックするなど、プロセスと品質管理をリンクさせることで、不良率はPPM(百万分の1)の単位まで下がってきた」と話す。その前提となっているのが、「半導体材料からパネルまでの作り込みを1つの工場で一貫して手掛けている強み」(掛川工場長)がある。

 一方で、CIS太陽電池は、結晶シリコン型に比べて、量産化された太陽電池のなかでは新しい技術のため、「20年間、本当に発電性能を維持できるのか」と危惧する声もある。薄膜太陽電池の1つであるアモルファス(非晶質)シリコン型は、稼働後の光劣化による出力低下が課題になりやすいことも、同じ薄膜型としてCIS型に対する不安材料になりやすい。ただ、光劣化に関しては、CIS型の場合、逆に太陽光に暴露することで徐々に定格出力を上回る発電性能を得るという現象が確認されている。設置後に出力が定格を超えるという発電実績は、CIS型太陽電池を採用した国内のメガソーラーサイトでも、幅広く報告されており、CIS型の評価が上がっている要因の1つにもなっている。

 だが、さらに長期の耐久性に関してはどうなのか。ソーラーフロンティアの神奈川県厚木市の研究所では、2003年に設置したCIS型太陽電池が10年経ってもほぼ当初の発電性能を維持しているという。「化合物半導体の分子構造は、光で壊れることはなく、セル自体は永久に発電性能を維持する」と、掛川工場長は言う。劣化の可能性が残るのは、バックシートや封止材料(EVA)など有機系の部材になり、これは結晶シリコン型でも共通した課題だ。ただ、歴史の長い結晶シリコン型太陽電池の場合、20年を超える設置例が出てきたことから、こうしたフィールドでの劣化状況を評価・分析することで、再現性の高い加速試験の手法が開発され始めている。新技術であるCIS型太陽電池の場合、今後、こうした信頼性の高い加速試験の開発なども課題になる。

■変更履歴
記事の冒頭で「熊本空港からクルマで30分ほどの熊本県国富町」としていましたが,「宮崎空港からクルマで30分ほどの宮崎県国富町」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2014/1/20]