2012年7月の固定価格買取制度(FIT)の施行から2年目に入り、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の稼働が相次いでいる。屋根置きが主体だった時代には、ほぼ国産パネルが占めていた日本市場にも、低価格を武器に海外製パネルがシェアを伸ばしている。今後、売電価格が低下するなかで、さらに海外製パネルの採用圧力は高まる。一方で、海外製パネルには、20年間の発電事業に求められる長期信頼性や耐久性に関して不安も聞かれ、国内メーカーの強みである「品質」への期待も高まっている。パネルメーカーの品質管理への取り組みを中心にレポートする。
パネルメーカーの“品質戦略”
目次
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使用済みCISパネルのリサイクルに道、低コスト・高収率で材料を分離・回収
ソーラーフロンティアが開発、セレンの回収率は90%以上に
太陽光パネルメーカーのソーラーフロンティア(東京都港区)が、自社製のCIS型の化合物半導体によるパネルに適した新たなリサイクル技術を開発し、実用化に向けた取り組みを急いでいる。
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「福島プライド」で世界を目指すアンフィニ
トラブルを乗り越え、楢葉町の新工場が本格稼働に
「トラブルを乗り越え、新工場が安定稼働にこぎ着けたのは、福島県で採用した社員たちの団結力の賜物」――。アンフィニ(大阪市浪速区)の小寺直人常務は、福島工場の社員たちの「頑張り」に目を見張る。小寺常務は、これを「福島プライド」と表現する。
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「ヘテロ接合型」の量産を開始、カネカの太陽光パネルに転機
CVD装置は自社設計、コスト・品質に化学メーカーの知見を生かす
カネカは2015年、「ヘテロ接合型」の太陽光パネルの量産出荷を始めた。ヘテロ接合型は、異なる半導体材料による太陽電池を接合してセル(発電素子)を構成するタイプで、カネカの場合、スライスして板状(ウエーハ)に切り出されたバルク(結晶塊)の単結晶シリコンの両面に、薄膜のアモルファス(非晶質)シリコンを形…
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中国内から物流品質を「日本基準」に変えるトリナ・ソーラー
住宅用にも注力、発電所開発会社も設立
中国トリナ・ソーラーは、2014年に合計3.66GWを出荷し、世界トップの太陽光パネルメーカーとなった。2015年も首位を維持したと予想されている。2010年に日本法人を設立し、産業用を中心に展開してきた。今後は住宅用の市場も開拓していく方針という。日本向けの輸送では、品質の向上を目的に、新たな手法…
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<第11回>最適な物流、自社の技術拠点で輸送やアフターサービスを向上、ハンファQセルズジャパン
物流体制を再編し倉庫は4カ所に集約、つくば技術センターの対応も強化
ハンファQセルズジャパン(東京都港区)は、社名の通り、ハンファQセルズの日本法人である。火薬を祖業とし、化学や金融、建設など、多角的に事業を展開する韓国の財閥ハンファグループの企業として知られる。
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<第10回>世界最大手の経験と日本の特徴を融合した納入、サービス、O&Mに注力、米ファーストソーラー
FITの運用変更を勝機に、日本の拠点は長期的に維持
米国の大手太陽光パネルメーカーであるファーストソーラーは、2013年に日本法人を設立し、日本市場を本格的に開拓し始めている。日本への太陽光パネルの供給において、工場を出荷後、日本の顧客に納入するまでの品質管理、物流、設置後のアフターサービスを中心に、同社の日本市場戦略を、アジア・パシフィック地域 リ…
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<第9回>両面発電セルの先駆者、PVG Solutions
独自の製造プロセスで信頼性を向上
北海道旭川市の冬は、平年で約70cmに達する積雪に加え、日中でも気温が氷点下となる日が多く、降った雪は凍結して解けにくい。そんなメガソーラー事業には不向きと思われる地で、想定以上の発電量を生み出しているのが、出力1250kWの「旭川北都ソーラー発電所」だ(図1)。2013年11月に稼働した。
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<第8回>日本で30年間の専業メーカーの経験を、世界最大級の供給能力と融合:サンテックパワージャパン
技術サポート力への信頼から再建中も販売量を拡大
サンテックパワージャパン(東京都新宿区)は、社名の通り、無錫サンテックパワー(Wuxi Suntech Power)の日本法人である。かつては中国サンテックパワーホールディングス(サンテックパワーHD)の傘下だったが、サンテックパワーグループの経営危機に伴い同社から事業を引き継いだ、無錫サンテックパ…
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<第7回>「貼り合わせ」の達人、フジプレアム
自社製の製造装置で、セルとガラス、シートを精密にラミネート
JR相生駅からクルマで約15分、兵庫県たつの市にある播磨科学公園都市は、理化学研究所の大型放射光施設「Spring8」が立地するなど、研究施設が集積する地域だ。フジプレアムの太陽光パネル製造ラインは、同地区にある「播磨テクノポリス光都工場」の中にある。玄関前の駐車場には、高さ4.9m、1基で4.4k…
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<第6回>生産委託先と二人三脚でカイゼンに取り組むネクストエナジー
徹底した検査で「クラック(割れ)」を排除
豊かな自然に恵まれ、リゾート地として知られる那須高原。その東端に位置する「那須ちふり湖カントリークラブ」(栃木県那須町)は、ゼネコン大手の鹿島が保有・運営する、創立20年を迎えた伝統あるゴルフクラブ。「那須ちふりメガソーラー」は、同クラブの隣接地に2013年11月29日に売電を始めた。出力2MWのメ…
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<第5回>京セラの“こだわり”
自社生産を貫く真摯なものづくり
固定価格買取制度(FIT)がスタートし、メガソーラー(大規模太陽光発電所)建設が相次ぎ、バンカビリティ(融資適格性)の高い日本メーカーブランドのパネルへの引き合いが殺到している。多くの国内パネルメーカーが、海外メーカーのOEM(相手先ブランドによる生産)品を自社ブランドとして販売し始めた。そのような…
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<第4回>耐候性の設計にこだわる三菱電機
セルの線を4本にしたワケ
広島県庄原市にある出力約2MWの「庄原太陽光発電所」、長崎県香焼町で稼働する出力約2.6MWの「ソフトバンク長崎香焼ソーラーパーク」(図1)。この2つのメガソーラーには、共通点がある。それは、太陽光パネルに三菱電機製の単結晶シリコンタイプ、パワーコンディショナー(PCS)に東芝三菱電機産業システム…
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<第3回>パナソニックの教訓
国際規格に加え、20種類以上の独自試験
大阪府貝塚市二色の浜は、大阪では比較的、温かく海水浴場でも知られる。パナソニックの太陽電池事業の司令塔とも言える「二色の浜工場」は、大阪湾を望む海岸沿いにあり、沖には関西国際空港が目と鼻の先に見える。同工場で太陽光パネル(太陽電池モジュール)を本格生産し始めたのは2004年。現在、同社では、太陽電池…
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<第2回>太陽光パネルの老舗・シャープの強み
約30年の使用データを基に独自に加速度試験
奈良県高市郡高取町にある壷阪寺は、703年に創建された西国三十三所第六番札所。室町時代に創建された礼堂や三重塔などのほか、特に眼病への霊験で知られる名刹だ。境内は山の斜面伝いにあり、本堂を後にして石段を上がっていくと、インドから贈られたという高さ約20mの大観音像にたどり着き、間近から拝むことができ…
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<第1回>ソーラーフロンティアの生産革新
宮崎の巨大工場に見る、コストと品質の秘密
宮崎空港からクルマで30分ほどの宮崎県国富町は、太陽光パネルを設置した住宅の比率が全国的にも高いことで知られる。この太陽光発電の“メッカ”に、ソーラーフロンティア(東京都港区)の国富工場がある。太陽光パネルの生産能力は、年産900MW、1日当たり約1万5000枚を生産することになる。1つの拠点でこ…