前回に続いて、太陽光発電システムのトラブルの実態に詳しい、当サイトのアドバイザーでもある産業技術総合研究所 太陽光発電工学研究センター システムチームの加藤和彦氏と、吉富電気 吉富政宣氏の対談から、遭遇したトラブルの事例や、その解決に向けた技術や意見などを紹介する。両氏は、太陽光発電システムのトラブル現場を調査する活動「PVRessQ!(PVレスキュー)」を牽引し、知見を蓄積するだけでなく、安全に関する情報発信にも注力している。今回は、分業による弊害について議論する。

――太陽光発電システムは、太陽電池モジュールを構造物として設置するところに難しさがあるように見える。

加藤 さまざまな分野において、分業化や専業化が進んでいる中で、太陽光発電は分野横断的な技術で、電気と構造の両方を満たすところにポイントがある。

吉富 太陽電池モジュール側が主導している場合、電気技術者のみの視点での発想が目に付きがちである。そのような取り組みであっても、架台などの構造物側まで正しく設計、設置できる能力を有していれば、問題は生じづらい。しかし、現実には、そこまでの能力を有していないために、構造物側に問題が生じてしまう例がある。

 一方、大手のゼネコン(総合工事業者)のような、構造物の専門家が主導している場合、電力の利用に対する知見はあっても、半導体と電気工学に関する知見には乏しいために、電気側に問題が生じてしまう例がある。

加藤 こうした要因には、いわゆる縦割り組織の弊害があるように感じている。縦割り組織というと、一般的には、行政の悪弊として取り上げられることが多いが、太陽光発電では、学会なども縦割りの構造になっている。

 具体的には、電気、構造、土木などと個別の分野ごとの取り組みとなっている。太陽光発電は、それぞれの分野を横串に通した技術であり、必要なのは、分野をまたいで横串をさして議論する場だが、現在のところ、そのような場は存在せず、研究者まで縦割りになっている。

対談する産業技術総合研究所 太陽光発電工学研究センター システムチームの加藤和彦氏(右)と吉富電気 吉富政宣氏(左)
(撮影:森田 直希)