無効電力分だけ太陽光パネルからの有効電力を制限

 無効電力は、太陽光パネルから取り込んだ有効電力から作り出すのではなく、系統側から取り込むために、直接、発電には影響を与えません。しかし、PCSにとっては、太陽光パネルから取り込む有効電力と、系統から取り込む無効電力の両方を負担することになります。この無効電力を取り込む分だけ、太陽光パネルから取り込む有効電力を制限する必要がでてきます。このため、太陽光パネルによる発電が、その制限値より多い状況にある場合、その分の売電量が減ることになります。

 無効電力を取り込んで系統の電圧上昇を抑制する方法は、二つあります。一つは、系統の電圧が指定された電圧以上になると、指定された電圧以下になるまで力率制御の上限である0.85まで、連続的に無効電力を注入して電圧を抑制する方法です。もう一つは、有効電力と無効電力の比率を、常に一定とする力率一定制御です。

 メガソーラーの場合、系統に及ぼす影響が大きいことや、複数台のPCSを設置することが多いことから、PCS間の電圧干渉が生じにくい力率一定制御を採用するのが一般的です。この力率一定制御の原理を、図3に示します。

図3●力率一定制御による系統の電圧上昇抑制の仕組み
力率0.85という条件を電力会社から受けたとすると、出力500kW機のPCSの場合、有効電力の出力を最大425kWに抑えなければならない。太陽光パネルからPCSに入力される電力が425kW以下ならば、そのまま全量を売電できる(出所:著者)
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 例えば、力率一定制御の場合で、連系規定で定められた上限の力率である0.85という連系条件を電力会社から受けたとすると、出力500kW機のPCSの場合、有効電力の出力を500kW×0.85で最大425kWに抑えなければなりません。

 その時の日射などの状況によって、太陽光パネルで発電し、PCSに入力される電力が425kW以下ならば、そのまま全量を売電することができます。425kWを超えていた場合、その分は制限されるために発電損失となりますが、太陽光パネルの容量が500kWならば、有効電力の出力を425kWに制限されたPCSとの関係を過積載比率で表すと、1.18対1となるものの、太陽光パネルからPCSの出力に至るまでの中間損失が、通常は20%程度あるために、発電量には大きな影響を与えないことになります。こうした力率制御は、多くのメガソーラーにおいて、電力会社から連系条件として指定されているのが現状です。