無効電力を注入し系統の電圧上昇を抑制

 ここで、なぜ発電時に系統の電圧が上昇するのかを、図2の電圧上昇の発生メカニズムを使い、高圧系統に連系したメガソーラーを例に説明します。PCSは、前述した通り、電力会社の配電用変電所の系統電圧に対して、少し高い電圧を発生して電力を流し込みます。

図2●発電時に系統の電圧が上昇するメカニズム
送電線が長くなるほど、インピーダンス分による電圧が大きくなり、電圧上昇分が増える(出所:著者)
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 この「少し高い電圧」とは、送電線の抵抗(r)とリアクタンス(x)によって決まるインピーダンス分による電圧(Δv)を、PCSの本来の出力電圧に加えたものです。送電線が長くなるほど、このインピーダンス分による電圧が大きくなり、電圧上昇分が増えることになります。

 系統の電圧の上昇幅は、電気事業法で規定されています。低圧需要家の単相式の場合は101Vに対して±6V(±6%)、メガソーラーのような三相3線式の場合は202Vに対して±20V(±10%)となります。

 ところが、メガソーラーと低圧需要家が同じ送電線に繋がっていることによって、実際にメガソーラーに許容される電圧の変動幅は、低圧需要家の単相式に合わせることになり、電圧の上昇幅が三相3線式より狭まることによって、電圧上昇抑制対策が必要なケースが増えることになります。

 力率制御は、発電した電力(電流)を系統に送り込む際に、系統の電圧よりも位相を少し進めることによって系統のインピーダンス分を相殺する無効電力量を送り込むことで、こうした電圧の上昇分を抑制する対策です。具体的には、連系する電力会社から提示された最大0.85の力率で無効電力を制御します。