メガソーラービジネスを安定的に運営し、収益性を高めるには、「発電事業者」である運営者が最低限の電気設備の知識を備え、適切な太陽光発電システムを構築・運用するのが前提になる。国内メガソーラー向けパワーコンディショナー(PCS)の最大手である東芝三菱電機産業システム(TMEIC)の技術者で、当サイトのアドバイザーでもある伊丹卓夫氏が、メガソーラーに新規参入した事業者が抱く、いまさら聞けないメガソーラー技術の基本に答えた。

 前回に続き、パワーコンディショナー(PCS)がメガソーラー(大規模太陽光発電所)で担っている、六つの役割を紹介します。(1)MPPT制御(最大電力点追従制御)、(2)高調波抑制対策(PWM制御)、(3)系統連系制御(電圧形/電流制御)、(4)力率制御(電圧上昇抑制対策)、(5)系統連系保護(OVR、UVR、OFR、UFR、単独運転保護装置:受動/能動)、(6)モニター(入出力電圧、電流、電力、無効電力、力率、系統異常、直流電圧・電流異常)のうち、前回は(1)のMPPT制御と(2)の高調波抑制対策について解説しました。

発電した電力を適切に送電する系統連系制御

 (3)の系統連系制御は、メガソーラーが発電した電力を、適切に系統に送電するための機能です。この系統連系制御も、インバーターにはない、PCSならではの機能と言えます。

 インバーターはあくまで電力変換装置です。これに対して、PCSが担っている系統連系制御は、系統の電圧を検知して、発電した電力を適切に系統に送り込むための制御です。

 PCSによる系統連系制御では、図1に示したように、系統の電圧を基準として、これより少し高い電圧を発生させたり、電圧の位相をシフトすることによって生じる電圧差を使って、発電した電力を系統に流し込みます。

図1●PCSの出力による系統連系制御の原理
系統の電圧より少し高い電圧を発生させたり、電圧の位相をシフトすることによって生じる電圧差を使って発電した電力を系統に流し込む(出所:著者)
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 また、発電時の系統の電圧を安定させるために、電流を流し込むだけでなく、系統の電圧に対し、流し込む電流の位相を変える制御をPCSが担っています。

 この時、系統の電圧と流し込む電流のゼロクロス(位相)が同じ場合を、力率1と規定しています。力率とは、交流電力のうち実際に利用可能な電力の比率のことです。交流電力は、売電可能な有効電力と、売電できない無効電力で構成されます。このうち有効電力が100%占めている交流電力を力率1、無効電力が100%を占めている交流電力を力率0と規定しています。

 この前提を基に、(4)の力率制御を紹介します。力率制御とは、(3)の系統連系制御によって、メガソーラーで発電した電力(電流)を、系統の電圧よりも位相を進ませることによって、無効電力を注入して系統の電圧上昇を抑制する制御を指します。