今回から、太陽光発電システムのトラブルの実態に詳しい、当サイトのアドバイザーでもある産業技術総合研究所 太陽光発電工学研究センター システムチームの加藤和彦氏と、吉富電気 吉富政宣氏の対談から、遭遇したトラブルの事例や、その解決に向けた技術や意見などを紹介する。両氏は、太陽光発電システムのトラブル現場を調査する活動「PVRessQ!(PVレスキュー)」を牽引し、知見を蓄積するだけでなく、安全に関する情報発信にも注力している。

対談する産業技術総合研究所 太陽光発電工学研究センター システムチームの加藤和彦氏(右)と吉富電気 吉富政宣氏(左)
(撮影:森田 直希)
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――メガソーラーの建設が相次ぐ中で、実際に建設後のメガソーラーを訪問すると、名だたる大手企業の取り組みが多いとはいえ、初めて発電事業に参入した企業がほとんどで、発電事業には手慣れていない様子であり、日本中が暗中模索し、試行錯誤している印象を受けている。

吉富 昨今、導入が進んでいるメガソーラーは、市場における社会実験と見える。そうした状況を象徴するような内容の宣伝ファックスが、ある太陽光発電の保守やモニタリングの企業から、弊社に届いたので紹介する()。

図●吉富電気に届いたファックス。メガソーラーで起きうる懸念が、漫画でわかりやすく表現されている
(撮影:森田 直希)
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 メガソーラーで起きうる懸念が、漫画でわかりやすく表現されており、内容は、大規模な太陽光発電所で、太陽電池モジュールの出力が低下していることを知った発電事業者が、設置事業者の担当者と思しき人物に、原因の究明と状況の説明を求めるものの、モジュール数量が膨大であるため、どのモジュールに不具合が起きているのか、すぐには把握できないでいる。そこで、「このような状況でお困りの方は、次のページへ」とその企業の宣伝に誘導するものである。

 住宅用の太陽光発電システムで、このような問題が生じた場合、設置しているモジュール数が少ないために、不具合が生じた部分を、後から直すという対応を講じる企業がほとんどである。ところが、大規模な発電所になると、モジュール数が多すぎて対応が困難になると考えられる。