メガソーラービジネスを安定的に運営し、収益性を高めるには、「発電事業者」である運営者が最低限の電気設備の知識を備え、適切な太陽光発電システムを構築・運用するのが前提になる。国内メガソーラー向けパワーコンディショナー(PCS)の最大手である東芝三菱電機産業システム(TMEIC)の技術者で、当サイトのアドバイザーでもある伊丹卓夫氏が、メガソーラーに新規参入した事業者が抱く、いまさら聞けないメガソーラー技術の基本に答えた。

 まず、雷による影響は二つに分けられます。「直撃雷」と「誘導雷」です。直撃雷は、文字通り、太陽光発電システムに直接、雷が落ちることを指します。誘導雷は、近くに雷が落ちた際に、落雷による電気エネルギーが太陽光発電システム内の送電線や接地用ケーブルなどを伝わって、発電設備に定格を大きく超える電圧がかかってしまい、損傷してしまうことを指します。

 直撃雷に関しては、地上からの高さを低く設計することによって、ほぼ回避できます。風車などと違い、地上高が低いメガソーラーへの落雷はほとんど例がなく、めったに影響しないと言えるでしょう。ただし、山間部など、それでも落雷が懸念される場所では、避雷針や避雷導体を太陽光パネルの周囲に配置する対策を施します。

 一方の誘導雷については、近くにある建物や地面への落雷によって、発電設備が地面に接地している部分の電位(基準点と比べたある点の電圧)が上昇したり、誘導された電位によって、PCSなどの発電設備内の主回路(機器内の主要な回路)に、過渡的な異常高電圧であるサージが誘引されることがあります。発電設備内の絶縁を破壊し、損傷させるといった被害が想定されます。

 この対策として、接続箱やPCSに、侵入する誘導雷サージに対応した避雷器(SPD)を搭載することが一般的です。避雷器は、ある一定以上の電圧がかかると短絡する仕組みによって、発電設備の損傷を防ぐものです。また、PCSは、不安定な太陽光のエネルギーを安定化させる大容量コンデンサーを備えており、これがサージ電圧を抑制する上で重要な役割を果たしています。

 PCSは過電圧、過電流保護装置を備えており、落雷などによる事故が拡大しないように、直流回路を遮断していますが、それでも故障に至った時、いかに早く復旧させて、発電損失を最少にするかが重要になります。TMEICでは、保護装置が動作した10μs間前の電圧や電流波形をメモリーカードに保存することで、侵入したサージエネルギー量を把握でき、故障した部品を短時間で特定できるようにすることで、復旧時間を短縮しています()。

落雷などによる事故時に、保護装置が動作した10μs間前の電圧や電流波形をメモリーカードに保存し、故障した部品を短時間に特定
(出所:著者)
[画像のクリックで拡大表示]

 その他、監視信号などの送信用の金属製ワイヤのサージに対応する場合にも、SPDによる対策を施します。

 さらに、遠隔監視に使われるモニタ用の通信には、影響を受けやすい金属製でなく光ケーブルを使った対策を施すことが一般的です。

「Q&A」で、取り上げてほしい疑問、回答者の東芝三菱電機産業システム(TMEIC)の伊丹氏に聞いてみたいテーマを募集しています。こちらにご記入下さい。