再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の施行によって、地上設置型のメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設が相次ぎ、比較的容易に建設できる土地については開発が進み、新たな適地の開拓は徐々に難しくなってくることが予想される。そこで、今後、設置場所として注目されるのが工場や倉庫、公共施設など、広い面積の屋根といえる。屋根設置型のメガソーラーとして、出力約5MWと現在、国内最大規模になるのが、旭硝子の関西工場高砂事業所(兵庫県高砂市)である。

 旭硝子の関西工場高砂事業所は、兵庫県中南部の播磨沿岸地域の重工業が盛んな地域にある。2000年代には、液晶パネル用の大型ガラス基板の中核工場として、同社の主力事業を支えている。同事業所の屋根に出力約5MWのメガソーラーを設置し、2013年3月に売電を開始した。

軽量化パネルで設置面積を2割、出力を1MW増やす

 旭硝子は、発電事業について、「あくまで材料メーカーとしての本分に資する事業に取り組むもので、売電による収益を第一優先として注力しているわけではない」と強調する。例えば、自社で開発した太陽光パネル向けや発電システム向けの部材や技術を活用したり、実証したりする場とする。

 今回、高砂事業所の屋根を選んだ理由は、屋根の面積が最も広く確保できるからである。事業所全体の敷地面積は約38万m2ある。事業所内の建物のうち数棟の屋根、約7万m2分に太陽光パネルを設置した。ガラス工場であることから、元々、特別高圧の送電線から受電しており、2MW以上でも系統連系しやすい環境にある。

 今回のメガソーラーには、大きな特徴がある。メガソーラーで一般的に使われる結晶シリコン系の太陽光パネルの重さを、従来品に比べて1/2以下とした軽量型のパネルを使うことで、従来は耐荷重性が足りずに設置をあきらめざるを得なかった屋根まで、太陽光パネルを設置できるようにしたことである(図1)。これによって、太陽光パネルの設置面積を、従来品のみで構成した場合に比べて約2割増やせた。拡大した面積は約1.3万m2、出力は約1MW分である。軽量化した太陽光パネルを約1MWの規模で屋根に設置した例は、世界初だという。

図1●耐荷重性が低い屋根に、軽量化した太陽光パネルを約1MWの規模で設置
(撮影:旭硝子)
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 耐荷重性が不十分な屋根に太陽光パネルを設置する場合、従来は二つの方法が使われていた。一つは、屋根の耐荷重性を向上する補強工事を施すこと。ただし、この手法だと設置コストが増加する。もう一つは、設置するパネルの枚数を、耐荷重性を満たす枚数に減らすことである。この場合、設置する太陽光パネルが少ない分、発電量が少なくなる。