図1 国会議事堂前の一般道で自動運転車を走らせる
図1 国会議事堂前の一般道で自動運転車を走らせる
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 2013年の夏以降、日本における自動運転車の開発で明らかに潮目が変わった。日系完成車メーカー各社が開発中の試作車を国内で発表したことに加えて、関係省庁が公道で走行する環境を整え、政府からも支援の追い風が吹き始めた(関連記事のまとめ)。

 9月26日、日産自動車は開発中の自動運転車が日本の公道を走行するためのナンバープレートを取得したと発表した(関連記事1)。翌10月上旬、トヨタ自動車は高速道路の同一車線内で手離し運転できる実力がある試作車を発表し、首都高速道路で実演して見せた(関連記事2)。10月にはホンダも自動運転車の試作車を発表(関連記事3)。11月に日産やトヨタとともに国会議事堂前の一般道で車両を走らせた。

 自動運転車を開発する上で、公道実験の役割は大きい(関連コラム)。「公道での走行距離が車両の完成度に比例する」(日産電子技術開発本部IT&ITS開発部エキスパートリーダーの二見徹氏)からだ。各社の自動運転車の研究の歴史は長く、基本的な制御アルゴリズムはおおむね完成しつつある。今後の実用化に向けて重要なのは、「机上では想定しきれない事象に対応すること」(二見氏)で、公道で走らせる以外に“想定外”の事象はなかなか見つからない。

 米国や欧州では公道で開発中の自動運転車を走らせることが一般的になりつつある(「日経Automotive Technology」の特集記事)。米国ネバダ州は2012年、米Google社が開発中の自動運転車に公道実験の免許を発行した。米国ではカリフォルニア州やフロリダ州でも公道実験できる。ドイツVolkswagenグループのAudi社はネバダ州でナンバープレートを得ている。欧州ではドイツがBMW社に発行した。スペインでも公道で走れる。

 一方の日本。2013年に入っても公道で走れなかったが、今夏ごろに「関係省庁の考えが一変した」(自動運転技術の開発者)。日産が国土交通省に公道用のナンバープレートを申請したのは9月以降のことだが、「あっという間に取得できた」(二見氏)と驚くほどである。

 一変した背景には、現政権の方針がある。安倍晋三首相が2013年4月、「自動運転技術の早期確立と公道走行について検討する」と話した。約1カ月後、「成長戦略第2弾」のスピーチで「日本で公道における自動走行の実証実験を進める。米国にできて日本にできないことはない」と言明。そして11月9日、安倍首相は国会議事堂前の一般道でトヨタ、日産、ホンダの3社が開発する自動運転車に試乗した(図1)。高速道路ではトヨタが実演したが、一般道での走行は初めてである。