前回の記事を公開した直後、ナノ級の超小型衛星「WNISAT-1」が打ち上げられた。今回は、WNISAT-1の打ち上げレポートを通して、超小型衛星をどのように運用するのか紹介する。

史上最多の超小型衛星を打ち上げる

WNISAT\-1をロケットリングに取り付けているところ
WNISAT-1をロケットリングに取り付けているところ
取り付け作業の際は安全のため、アンテナにカバーをかけている。
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別の衛星搭載モジュール(韓国STSAT\-3など)を上部に取り付けるところ
別の衛星搭載モジュール(韓国STSAT-3など)を上部に取り付けるところ
WNISAT-1はロケットリングに取り付け済(写真中央)。青色の直方体にはそれぞれ1~3個のキューブサットが格納されている。右手奥にロケットのフェアリングが見える。
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衛星搭載モジュールの取り付けが完了したところ
衛星搭載モジュールの取り付けが完了したところ
これでもまだ今回の打ち上げで最大のDubaiSat-2などいくつかの衛星は搭載されていない。
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 2013年11月21日、カザフスタンとの国境に程近いロシア南部のヤスネからWNISAT-1を含む合計32機の衛星を搭載したドニエプルロケットが打ち上げられた。前回の記事では、打ち上げられる衛星数を23機(ロケットに取り付けられる衛星数をカウント)と書いたが、実際にはイタリアのUniSat-5という衛星がキューブサット9機を内蔵して軌道上で放出したため、正しくは合計32機であった。お詫びして訂正させていただきたい。この32機というのは、1機のロケットに搭載された衛星数としては史上最多である(各衛星の紹介記事:英文)。

 実はこの打ち上げの前日の11月20日、米国のMinotaur-I(イプシロンロケットと同様の個体燃料ロケット)によって、29機の衛星(うち28機が前回紹介したNASAのElaNaプログラムによるキューブサット)が打ち上げられており、2日間で合計61機の衛星が軌道に投入されたことになる。まさに超小型衛星の発展を象徴する出来事となった。

 打ち上げロケットのドニエプルについても簡単に紹介しておこう。元々は旧ソ連時代のICBM(大陸間弾道ミサイル)だったものを、冷戦終結後の核軍縮の一環で衛星打ち上げ用に転用したものである。このような経緯があるため、YouTubeにアップされた打ち上げ動画でも分かるように、地下サイロから射出されたあと、メインエンジンが点火するという複雑な打ち上げシーケンスとなっている。30年以上前の技術が未だに現役であることを考えると、驚異的である。世界の打ち上げ市場において、インドのPSLVと並んで最も低価格な部類に入り、超小型衛星の打ち上げに利用されることも多い。