メガソーラービジネスを安定的に運営し、収益性を高めるには、「発電事業者」である運営者が最低限の電気設備の知識を備え、適切な太陽光発電システムを構築・運用するのが前提になる。国内メガソーラー向けパワーコンディショナー(PCS)の最大手である東芝三菱電機産業システム(TMEIC)の技術者で、当サイトのアドバイザーでもある伊丹卓夫氏が、メガソーラーに新規参入した事業者が抱く、いまさら聞けないメガソーラー技術システムの基本に答えた。

 太陽光発電システム全体の効率は、まず、太陽光パネル自体の変換(発電)効率と、太陽光パネルが発電した電力をいかに損失(ロス)を最小限に抑えて系統電力網に流して売電するか、という二つの要素があります。後者は太陽光パネルの発電量と、系統電力網との接続点で出力する電力量との間に生じる差で決まります。この電力量の差は、「中間ロス」と呼ばれます。一般的には、太陽光パネルの変換効率が話題になりがちですが、多少、変換効率が低くてもパネルの面積や枚数を増やせば同じ発電量を得られます。メガソーラーにおけるシステム設計としては、発電した電力の「中間ロス」をいかに減らすかという視点がたいへん重要です。

 太陽光パネルの変換効率で留意しておく点は、パネルを構成するセル(発電素子)の温度によって、効率が下がってしまうことです。特に結晶シリコン系のセルを使ったパネルでは、温度上昇による変換効率の低下が大きくなります。太陽光パネルの変換効率は、セルの温度が25℃の時に効率を測定しますが、セル温度が25℃の時には周辺の気温は20℃~30℃低くなり、日本では冬場でない限り、カタログ上の変換効率を実現することは期待しにくいと言えます。

 「中間ロス」に関しては、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「大規模太陽光発電システム導入の手引書・検討支援ツール」によると、約20%にもなります。ロスを引き起こす原因はいくつかありますが、まず配線によるロスが挙げられます。配線が長くなるほど、このロスが大きくなります。同手引書によると、PCSまでの直流配線の部分で10%、PCSによる直流から交流への変換時に4.3%、PCSから系統電力網までの交流配線の部分で1.6%がロスになるとしています。これに遠隔管理システムやモニタリングの電源などの所内負荷(2.0%)、PCSを収納する筐体内を冷やす電力(1.1%)、PCSの待機電力(1.6%)を加えると、約20%が失われることになります。ちなみにTMEIC製のPCSの効率は97%ですので、この場合、3%のロスで済みます。

太陽光パネルが生み出した電力を系統電力網に逆潮流して売電するまでに20%前後のロスが生じる
(出所:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「大規模太陽光発電システム導入の手引書・検討支援ツール」に、著者が加筆)
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 メガソーラーシステム全体の効率を高める方法は、主に三つあります。(1)配線の短縮化、(2)太陽光パネルやPCSなどの発電設備の高効率化、そして、(3)電力系統網に接続するための昇圧変圧器の高効率化です。

 配線の短縮化には、太陽光パネル群とPCSの配置が重要になります。太陽光パネルからPCS、さらにPCSから接続点までの配線の長さに影響するからです。敷き詰めた太陽光パネルの真ん中にPCSを置き、そこから直線状に接続点まで配線するというデザイン構成が多くとられるのは、配線の長さの合計が、最も短くなるからです。

 昇圧変圧器の効率化も、省エネ法のトップランナー制度の対象になったことなどで各社の技術開発競争が進んでおり、高効率なものを選べばその分、ロスは減ります。PCSそのものの工夫による発電量の増加、発電効率の向上については、次回以降、触れていきたいと思います。

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