スマート・コミュニティの事業化で成功するカギは、意外なところにある。発電設備やEMS(エネルギー・マネジメント・システム)といった再生可能エネルギーの供給側の事業に注力するのではなく、それを使う地域の課題に着目することだ。

 スマート・コミュニティとは「再生可能エネルギーを、住宅やビル、交通、ライフスタイル転換など、一連の社会システムとして効率的に活用する社会」である(経済産業省による定義、第1回を参照)。この定義にしたがえば、スマート・コミュニティの実現は、再生可能エネルギーをコミュニティ(地域)に導入し、地域住民がそのエネルギーを効率的に活用する状態を築くことだ。

 このため電機/自動車/センサなどの企業は、太陽光パネルなどの発電設備、電力の負荷平準化のための蓄電設備、エネルギー需給を調整するEMS(エネルギー・マネジメント・システム)といった社会資本の導入を進めている。さらに地域住民に対しては、エネルギー消費を抑えるインセンティブを与える仕組みも取り入れようとている。

 しかし、これらの取り組みは、スマート・コミュニティでの事業を構築する上では不十分と筆者は考える。再生可能エネルギーやEMSといった社会資本の導入に加え、エネルギーの有効活用によって地域の課題を解決することも必要だ(第3回を参照)。社会資本の導入費用を受益者が負担する動機がなければ地域に受け入れられないためである。

 では、スマート・コミュニティ事業によって地域の課題をも解決するにはどのようにすべきか。一つの考え方を高知県梼原町を例に示したい。