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 1999年、ISOの規格「ISO13407」として「Human-centered design process for interactive systems」が制定されました。そして2010年には「ISO9241-210」として、その内容が拡充されています。このISO9241-210に示されているHCDのプロセスが図2です。

図1●
図2●ISO規格で示されているHCD(Human-Centered Design)の6つのステップ

 HCDのプロセスは、大きく6つのステップに分かれています。[1]HCDプロセスの立案、[2]利用状況(Context of Use)の理解、[3]ユーザー要求の明示、[4]ユーザー要求に応える設計案の創出、[5]要求に対する設計案の評価、[6]要求を満たした設計ソリューション、の6つです。ポイントは、[1]のプロセス立案を実施した後、[6]の設計ソリューションが生まれるまで[2]~[5]を何度も繰り返すという点です。ただし、常に[2]の利用状況の理解に戻るわけではありません。[3]のユーザー要求の明示に戻ったり、[4]のユーザー要求に応える設計案の創出に戻ったりすることもあります。

 この図で特に注目していただきたいのが、[2]の利用状況の理解です(図3)。このステップでは、ユーザーの活動だけではなく、活動を取り巻く環境、活動における他の人々との関わり、道具や情報の使い方やそれらの組み合わせ方、さらには活動の前後の流れなどを総合的に理解します。空間的にも時間的にも、幅広く捉えるのが特徴です。

図3●「利用状況(Context
of Use)の理解」で着目するポイント
図3●「利用状況(Context of Use)の理解」で着目するポイント
ユーザーと、ユーザーを取り巻く環境全体を総合的に理解する。活動の前後の流れを押さえておくことも重要。空間的にも時間的にも、広がりがあるのが特徴だ。

 行動観察は、この[2]のステップで活用できる強力な手段なのです。