今回のシリーズは、太陽光発電システムの構築や保守などで知られるネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ケ根市)の担当者に、固定価格買取制度(FIT)に基づくメガソーラー(大規模太陽光発電所)のO&M(運用・保守)の状況などについて聞いている。前回は、監視(モニタリング)の基本的な手法の解説と、主に気象センサーの活用による事例を紹介した。第4回では、十数枚単位の太陽光パネルの発電状況を把握する「ストリング監視」の活用や、こうした監視データを活用することで不具合を早期に発見できた例などを紹介する。
――前回、解説してもらった気象センサーを使う例は、メガソーラー全体やパワーコンディショナー(PCS)ごとといった、大きなレベルで適正に発電しているかを把握できる手法だった。太陽光パネル自体の発電の不具合を把握する手法としては、どのような手法を採用するのが現実的なのか。
答 太陽光パネルの不具合は、前回紹介した、PCSの出力データや気象センサーの活用だけでは把握しづらい。太陽光パネルの不具合を把握するための現実的な手法として、十数枚単位の太陽光パネルの発電状況を把握するストリング監視の活用がある。
「バイパスダイオード」で発電不良が見えにくく
メガソーラーのような大規模な太陽光発電システムにおいて、不具合が生じた太陽光パネルの把握が難しいのは、1台ごとのPCSに接続する太陽光パネルの枚数が数十~数千枚と多いために、PCSの出力データからでは、太陽光パネル数枚程度の出力異常が見えてこないからだ。
パネルの出力異常を検知しにくくしている理由の一つに、「バイパスダイオード」の仕組みもある。太陽光パネルは四角いセル(発電素子)を直列に繋いでいるが、セル1枚が異常で電気的な抵抗となっても、そのセルを迂回して電気が流れるバイパスダイオードがあるので、発電量の低下は小さくて済む。この仕組みはもともと安全のためのもので、異常なセルが電気的に抵抗となって発熱すること(ホットスポット現象と呼ばれ、放置すると発火・破損事故につながる可能性もある)を防いでいる。この安全装置のバイパスダイオードによって、太陽光パネルはセルを直列に繋いでいながら、セル数枚の異常での出力低下はわずかで、そのために異常に気付きにくくなっている。
それでも、パネル十数枚単位のストリング単位で、発電量を監視していれば、そのわずかな出力異常も発見しやすくなる。具体的には、接続箱内に集まってくる各ストリングからの配線に電流センサーを取り付けて、ストリングごとに発電量を把握する(図1)。これによって、メガソーラー全体で、ストリングごとの発電量を比べることができ、発電量が不自然に低いストリングを把握できる(図2)。
発電量が不自然に低いストリングを把握できれば、そのストリングを構成している、例えば14枚の太陽光パネルのうち、どのパネルで不具合を生じているのかは、温度を測る赤外線センサーカメラを使えば、数分間で判断できる。