前回に続き、太陽光発電システムの構築や保守などで知られるネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ケ根市)の担当者に、固定価格買取制度(FIT)に基づくメガソーラー(大規模太陽光発電所)のO&M(運用・保守)の状況などについて聞いた。第3回目となる今回は、監視(モニタリング)手法の基本的な解説と、国内での導入状況、今後のあり方などを紹介する。

――ひと口にメガソーラーのモニタリングと言っても、どんな手法があり、現状ではどこまで導入が進んでいるのか。

 最も基本的なモニタリングは、パワーコンディショナー(PCS)から発電量の情報を収集し、モニター画面などに表示するものだ。固定価格買取制度(FIT)が始まる前の産業用太陽光発電システムでは、環境配慮を重視する企業姿勢をアピールする目的が大きかったので、大きなディスプレイにリアルタイムで発電量を表示するようなモニタリングシステムが好まれた。FITの施行によって太陽光発電システムの収益性が重視されるようになり、異常を早期に発見するため、単に発電量を表示するだけでなく、データを蓄積し、分析する方向に高度化してきた。具体的にはインターネットを通じてクラウドによるサーバーに発電量の情報を蓄積し、グラフ化して時系列で発電量を比較するなどの仕組みが一般化してきた。

「気象センサー」は必須、増えてきた「ストリング監視」

――PCSの発電量を監視・分析していれば、発電システムの異常が発見できるのか。

 PCSから得られる発電量は、太陽光発電システム全体の発電量なので、メガソーラーなど大規模なシステムになると、多少の出力異常があってもなかなか気づかない。出力異常を見つけるにはこれだけでは足りない。異常を発見する手助けになる手法には大きく2つの方向性がある。

 1つは、サイト内に日射量や気温、風速などを測定する気象センサーを取り付けて、その天候で得られる発電量を推定し、その値と実際の発電量を比べる方法。もう1つは、より限定した太陽光パネルのエリアごとに発電量を把握する手法で、具体的には、「ストリング」と呼ばれる直流接続した10数枚の太陽光パネルの回路ごとを監視する手法(ストリング監視)、さらに太陽光パネル1枚ごとを監視する手法が提案されている。発電量をセンシングするセンサーあたりのパネルの数を減らし、相互に比較することで、部分的な出力異常に気付きやすくなる。

――気象センサーや、ストリング監視、パネル監視は、どこまで普及しているのか。

 モニタリングシステムの導入において、気象センサーの設置は必須だ。これがないと「晴れているのになんとなく発電量が少ない」と感じて施工業者などに相談しても、「部分的に雲がかかっていたのでしょう」と言われればそれまで。反論できない。

 気象センサーの情報に基づく発電量の推計値と実際の発電量との乖離は、太陽光発電システムの異常に気付く第一歩であり、施工業者などに調査を依頼する際の有力な“武器”になる。ただ、初期コストを少しでも抑えることだけに関心が強く、モニタリング装置にまったく関心を示さない発電事業者の場合、気象センサーさえ設置しない例がないわけではない。