「当社で太陽光パネルの研究に取り組み始めた頃の微弱な発電デバイスから、よくここまで到達した。感慨深い」(京セラの稲盛和夫名誉会長)――。現時点で国内最大の規模となる、出力約70MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)が発電を開始した。京セラグループを中心とする鹿児島メガソーラー発電(鹿児島市)が、鹿児島市七ツ島に建設した「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」である(図1)。

図1●桜島の南西にある鹿児島七ツ島メガソーラー発電所
(出所:京セラ)
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 発電事業者の鹿児島メガソーラー発電には、京セラのほか、KDDI、IHI、九電工、鹿児島銀行、京都銀行、竹中工務店の7社が出資している。太陽光パネルは京セラ製、パワーコンディショナー(PCS)はドイツSMAソーラーテクノロジー社製で、建設は京セラソーラーコーポレーション(京都市)、九電工、竹中工務店の3社による建設工事共同企業体が、運用・保守(O&M)は京セラソーラーコーポレーションと九電工の2社がそれぞれ担当する。総投資額は約270億円で、みずほ銀行を幹事とするプロジェクトファイナンスで調達した。

 年間の予想発電量は、一般家庭の電力使用量約2万2000世帯分に相当する、約7万8800MWh。発電した電力は全量を九州電力に売電する。鹿児島県内の電力需要の2.2%を賄える。IHIの工場跡地である、鹿児島湾に面した埋立地に建設した。IHIは出資者としてメガソーラー事業に参画するとともに、約20年間にわたって土地の賃貸料を得る。

桜島を前に約29万枚の太陽光パネルが並ぶ

 桜島を前に、約29万枚の太陽光パネルが整然と並ぶ光景は、まるで太陽光パネルの海原を眺めているような迫力がある(図2)。

 敷地面積は約127万m2で、東京ドーム約27個分に相当する。外周は約4.3kmあり、歩いて一周すると約1時間30分かかる。あまりに広いので、土地の整地時には、GPS(全地球測位システム)を搭載したグレーダー(整地用の建設車両)を使ったほどである。

 約29万枚の太陽光パネルを並べるための基礎工事では、延べ5400台のミキサー車を使って、2万m3のコンクリートを流し込んだ。架台を支える基礎は3万7660本、組み上げた架台の鉄骨の重さは4840トン、架台を止めるアンカーボルトは15万本。こうした建設工事を1年2カ月間で終えるために、九州の施工会社208社から、延べ7万8000人が建設現場に従事した。ピーク時には、1日に450人を動員した。

図2●整然と約29万枚の太陽光パネルが並ぶ
(出所:日経BP)
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