前回に続き、太陽光発電システムの構築や保守などで知られるネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ケ根市)の担当者に、固定価格買取制度(FIT)に基づくメガソーラー(大規模太陽光発電所)のO&M(運用・保守)の状況などについて聞いた。第2回目となる今回は、O&M体制の構築に関する課題や、あるべき姿などを紹介する。

――メガソーラーの発電事業者は、O&M(運用・保守)に適正なコストを支払っているのか。

 一般的な設備事業の場合、除草ならば除草業者に依頼するなど、保守に必要なそれぞれの専門事業者に発注する方が安くて済む。ところが、太陽光発電については、個別の事業者に発注すると、発電事業者にとって必要以上に高いコストを支払いがちな状況がある。

不合理な電気設備間の通信方式の不統一

 例えば、雑草が太陽光パネルを覆って発電量が減ることを防ぐために、専門業者に除草を依頼すると、除草業者の多くは、できるだけ多くの回数、除草することを提案してくる。事前に草の高さが何cm以上に伸びたら除草するという基準を決めることはできるが、実際には、その基準を数cm超えて草が伸びても、生える場所によってはパネルに影がかからず発電量に影響していない場合もある。

 メガソーラー(大規模太陽光発電所)クラスでは、1回の除草に50万円以上かかり、発電量に影響していない段階で除草して年間の除草回数が増えれば、それだけで年間で百万円単位のコストが生じることになる。発電能力に影響するという観点で、本当に必要な除草がどこまでか、その敷地での状況や管理の手間を考慮し、発電事業の収支と関連付けて計画して判断する必要がある。

 通信についても似たような状況がある。太陽光発電システムに関連するパワーコンディショナー(PCS)などの電気設備の通信方式と、受変電設備の異常を送信する通信方式は異なっているために、別々の契約になる。それぞれの電気設備の監視費用に別契約の通信費が含まれ、一般的なメガソーラーでは1カ月あたりそれぞれ、約5500円、約1万円などと設備ごとに支払いが必要になる。

 通信方式を統一すれば、通信サービスの基本料が半分で済むはずで、O&Mのコストを低減できる。だが、発電設備と受変電設備保守の責任境界線を明確化するとの理由から、これらの統合は進んでいない。こうした例はほかにも多くあり、発電事業者の採算性と利便性を考慮したメガソーラーの保守システムが構築される必要がある。

1回の除草に50万円以上かかり、発電事業全体の収支と関連付けて検討する必要がある
(出所:日経BP)
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