世界的な導入の動き

 EPEATへの適合が最も求められるのは、何といっても米国である。米国では大統領令(Executive Order 13423)において、「政府関連機関は購入する電気電子製品の95%以上をEPEAT適合品としなければならない」と定められている。ただし、特殊な性能や機能が求められる分野ではEPEAT適合品がそもそも市場に存在しない場合もあるので、政府関連機関はこの規定を満たすために、汎用的な製品ではほぼ確実にEPEAT適合品を調達しようとする。従って、政府調達や公共の入札案件に関わる製品では、EPEATへの適合は必須といえる。

 近年、その影響力は米国外にも拡大している。もともと、製品の安全性に関しては国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC)などによる規格が存在するのに対し、環境に関しては国・地域ごとに異なる法令や規格などが混在しており、国際標準と呼べるものがない。そうした中、EPEATは、前述の通り要求事項を全世界の国・地域ごとに評価できるようにするなど、事実上の国際標準に近付けていこうという意図がうかがえる。事実、米国以外の国でもEPEATを調達基準として導入する動きが見られる。

 例えば、オーストラリアでは同国の環境省が定めた「オーストラリア政府情報通信技術持続可能性計画」(Australian Government ICT Sustainability Plan)の中で、「政府調達品はEPEATのシルバー適合品か同等の環境ラベルを取得した製品でなければならない」と明記された。他にもカナダ/ニュージーランド/英国/フランス/ポーランド/シンガポールなどでも、何らかの形でEPEATの要求事項を採用・参照している。

 もちろん、ゴールド適用品でもよい。

 さらに、2013年には中国でもEPEATと同様の環境評価ツールについて導入を検討するという発表があった。その後も、中国の派遣団がEPEATの管理・運営団体であるGECと会合を持つなど、検討が進んでいるようだ。このように、EPEATやそれと同様の環境評価ツールが少しずつ世界に広まっていくとみられる。

 現在は各国・地域の政府主導による取り組みが目立つが、一般消費者市場での認知度も向上しつつあり、その動向からは目が離せない。GECは、メーカーや流通業者などと協力して、一般消費者へのEPEATの認知を促進させている。例えば、米国最大の家電量販店である「Best Buy」では、販売時にEPEAT適合品であることを一般消費者に向けて分かりやすく表示したり、EPEAT適合品専用のWebサイトを設けたりしている。