今回から、長野県駒ケ根市に本社のあるネクストエナジー・アンド・リソースの技術者、保守担当者に聞く。同社は、2003年の創立以来、太陽光発電システムの構築や保守ばかりでなく、太陽光パネルのリユース(再使用)を通じてパネルの評価・品質管理で技術を蓄積してきた。第1回目のテーマは、O&M(運用・保守)の現状と重要性。その最大の目的が「発電能力の維持」にあることを解説してもらった。

――FITによって大規模な太陽光発電システムが次々と稼働し始めた。それらの運用や発電はどのような状況か?

 2012年7月のFIT施行後、大規模な太陽光発電システムの建設が始まり、ここ半年で稼働が本格化した。実は当社には、ほかの業者が設計・施工した太陽光発電所の事業主から、事業計画で見込んでいだ発電量にまったく達しないとの相談を10件以上、受けている。こうした事業主は、設計・施工業者などとO&M(運用・保守)契約を結んでいる例も多い。

怒りの持って行き場がない・・

 当然、原因の調査・改善を強く要請しているが、結局、改善には至らず、「運用・保守契約には発電量の保証まで含んでいない」と言われ、関係が悪化していることが多い。FITによる発電事業は、「発電量=売上」なので、それが3割も下回っていては怒るのは当たり前でもある。最終的には施工業者やO&M事業者を信用できなくなり、怒りの持って行き場がなくなり、当社のような外部の会社に調査を依頼するということになる。

――大規模な太陽光システムの設計・施工が短期間に集中し、経験の浅い事業者が、不適切な設計・施工をしたり、過大な発電量を見積もったりしているのか。

 FITによって太陽光発電事業者として取り組み始めた企業は、多種多様な業種があり、太陽電池や電気設備の知識がほとんどない企業も多い。一方で、太陽光発電システムを建設する側にしても、市場が急速に立ち上がり、メガクラスのシステムの設計、建設、保守を手掛けた経験のある業者が少ないこともあり、業界全体が試行錯誤のなかにある。技術や制度も含め、あちこちに隙間(課題)が残されている。

 太陽光発電所を単に投資対象として捉え、発電現場にあまり興味がなく発電量だけに注目するような発電事業者もいる。相談を受けた太陽光発電所の中には、著名な大手メーカーが設計・施工を担ったものもあり、「大手だから安心」というわけでもない。設計・施工業者に任せきりにせずに事業者が知識を高めつつ、納得のいく形で進めていくことが大切だと思う。

――20年という長期的な運用を前提にした設計・施工・保守がされているのか。

 設計・建設だけでなくO&Mも大切ということはかなり根付いてきたと思う。それでもまだ優先順位が低い場合が多い。他業種から新規参入した事業者では、太陽光パネル、パワーコンディショナー(PCS)、架台など、すべてが初めての経験で、まずは「建てること」で精一杯になりがちだ。建設コストのほか、完成後の遠隔監視などの話をすると、「そこまでしなくても」という意識の事業者も多い。

 しかし、本来は完成後にどのような運用・監視をするかまで検討しながら、システム全体を設計し、事業計画を立てる必要がある。誰かが常時遠隔監視していないと、何らかの理由でPCSが停止し、数日間まったく売電していなくても気付かないこともある。また、メガクラスになると、雑草の除去にサイト全体で1回、百万円程度の費用になることもある。それを年に何回、見積もっておくのか。発電事業者からすれば、その分、利益が削られることになるので、あまり考えたくない。建設後のこうしたコストに関して、まだ、必要経費として捉えている事業者は少ない。

 家や車など、高額な投資には、その維持・運用にある程度、お金がかかるのは当たり前。例えば、クルマの場合、購入後の駐車場代や車検費用など、疑問もなく想定している。メガソーラーも同じで、億単位の設備なのだから、O&Mにもある程度のコストが必要になる。

遠隔監視システムの最終的な目的は、発電能力の維持
(出所:ネクストエナジー・アンド・リソース)
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