稼働まもなく約40枚の出力異常を発見

――それでは、数百枚規模の太陽光パネルの異常など、大規模な枚数の出力低下になるまで、発見できないということか?

池田氏 監視する枚数の単位を少なくすることで、不良品を発見しやすくする方法はある。実は、当社が建設を担当した1.5MWのメガソーラーの1つは、稼働から1年足らずで、監視システムによって約40枚の太陽光パネルの出力異常を見つけ、パネルメーカーに連絡して交換してもらった。不良品を発見できたのは、このメガソーラーが、「ストリング監視」と呼ばれる監視システムを採用していたからだ。

 「ストリング」とは、複数の太陽光パネル(太陽電池モジュール)を直列に繋いだ1回路のことで、通常はパネル10~20枚の直列回路になる。メガソーラーでは、複数のストリングを架台下の集線箱で並列に繋ぎ、複数の集線箱をまとめて接続してPCSに繋げる。「ストリング監視」では、ストリング回路ごと発電量を計測して常時監視し、データを蓄積する。具体的には、集線箱にセンサーを取り付ける。

 このメガソーラーでは、ストリング毎の発電量データを比較していくなかで、発電量が低い回路がいくつか見出され、そのストリング回路のパネルを検査装置で1枚1枚点検して、不良品を見つけた。“怪しい”ストリング回路まで特定できれば、経験ある専門家であれば、その回路のどのパネルが異常なのかを突き止めるのは難しいことではない。このケースでは、約40枚のパネルの出力は定格の1割もないレベルまで低下しており、ほとんど発電していない状態でした。

――直列に接続したパネルの一部にでも異常があれば、それが電気的な抵抗になり、ストリング回路全体の出力が大幅に低下するのではないか。そうなればPCSごとの監視でも気づく気もするが。

池田氏 太陽光パネルの回路には、「バイパスダイオード」と呼ばれるデバイスが組み込まれており、部分的に異常があって電気的な抵抗となっていても、そこを回避して電流が流れることで、出力が低下しない回路設計になっている。仮に1枚のパネルがまったく発電していなくても、回路上、そのパネル1枚だけがないものとして発電しつづける。メガソーラーのような大規模システムの場合、バイパスダイオードがある意味でネックになり、不良パネルを見つけにくくなっている。数千枚のパネルのうち数枚が発電していなくても、全体の発電量から異常を見つけ出すのは至難の業だ。このケースでも、ストリング監視がなければ、40枚の異常パネルには気付かなったと思う。

太陽光パネルのメンテナンス研修風景(出所:横浜環境デザイン)
太陽光パネルのメンテナンス研修風景
(出所:横浜環境デザイン)
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