北海道での連系容量の制限は“痛恨のエラー”

SBエナジー 副社長 藤井 宏明氏(撮影:清水 盟貴)
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――10月7日の北海道勇払郡安平町における最大出力約111MWのメガソーラー「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク」の起工式では、当初、第2期分まで計画していたのに断念せざるを得なかったことを、残念がる声が地元からも多く聞かれた。この原因となった系統連系の制約をどう思うか。

藤井氏 まさに、将来の日本のエネルギーのベストミックスの姿について、大きな影響を及ぼす制約だと感じている。将来、予想されるエネルギーの総需要から試算すると、北海道でメガソーラーがさらに導入されない限り、日本で最適と考えるエネルギーのベストミックスの姿には近づかない。

 ところが、こうした視点で政策を策定していない。既存の電力系統網がメガソーラーの計画規模に対応しきれないという問題が顕在化したなかで、とりあえずふたをしておこうという発想に見える。系統連系するメガソーラーの合計出力400MWまで、2MW以下のものを合わせて太陽光発電で合計700MW程度までという今回の対応は、こうした場当たり的な発想を示している。

 この対応は、FITどころか、再生可能エネルギーを含めた将来の日本のエネルギーのベストミックスの実現に向かっていた方向を台無しにし、今後5年後、10年後に、あの判断はミスだったと語られるような、痛恨のエラーだと思っている。

 民間の投資を呼び込むためにFITを導入したのに、その投資に冷や水を浴びせてしまった。一度、冷めてしまった民間投資は、なかなか復活しないのは経済の常識。こうした対応をしておきながら、今後、どう進めていくのか。今後、エネルギーのベストミックスの姿を定めた時に、必要な太陽光発電の規模が大幅に高まった場合、もはや企業が積極的に投資しなくなってしまうかもしれない。

 今回の対応として、接続拒否ではなくて、例えば、国の主導で広域系統線を強化する計画を打ち出し、5年後まで我慢できる事業者は待って欲しいというような方向性を示すべきだったと感じている。

 北海道の太陽光発電、風力発電のポテンシャル(賦存量)、九州の太陽光発電、地熱発電の賦存量は大きく、特に北海道については、太陽光発電が経済的に主要産業の一つになり得る可能性がある。

――このような、系統連系が適わずに断念した計画は多いのか。

藤井氏 計画してきた案件の半分近くを、系統連系が実現しなかったために断念している。中には、電力会社に要請すれば、系統連系できた例もあるが、送電線を長い距離に敷設し、コスト面で無理をしてまで不採算な発電所を建設することはできない。

――今後について伺いたい。これまで積み重ねてきたメガソーラーの経験をどのように生かしていくのか。

藤井氏 東日本大震災を機に、国民全体の機運も、再生可能エネルギーを増やすべきだという方向に向いてきた。しかし、日本国民に限らず、のど元すぎれば冷めてしまうこともある。これを防いでいきたい。国民全体でエネルギーのベストミックスを探していく必要がある。

 2011年7月に、まだ建設地の詳細が確定せず、買取価格も未決定ななかで、国内の10カ所以上に太陽光発電所を建設し、合計出力を200MW以上にすると宣言した。それ以降、情報発信について、大きく意識してきた。再生可能エネルギーを増やすべきという国民の機運を冷まさない狙いから、要所要所で情報発信し、常にエネルギーについて考えるきっかけにしてもらう。これを重要なポイントに置いている。