早急にあるべきベストミックスの姿を示すべき

SBエナジー 副社長 藤井 宏明氏(撮影:清水 盟貴)
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――メガソーラーを比較的簡単に建設しやすい土地については、開発が進んで徐々に残り少なくなってくる。今後は、建設上の制約が多い開発プロジェクトが増えてくる可能性があるが、そこで留意すること、工夫することなどは何か。

藤井氏 太陽光発電という、単一の事業モデルだけで議論すると、発電に適した場所、電力系統との連系に適した場所、建設に適した場所はどうしても減ってくるだろう。

 SBエナジーでは、もっと広い視野で捉えており、あくまでも、今後の日本のエネルギー源のあるべき姿として、さまざまな電源の特徴を生かし、その時々の需要の状況に適切に対応できるような電源の組み合わせを追求する、いわゆるエネルギーのベストミックスを実現するためのメガソーラーとの位置づけである。

 そのベストミックスの姿が描かれていない状況にあるが、まずは、再生可能エネルギーによる電源が不足しているという認識が国にあり、まず走り出すために、固定買取価格制度(FIT)を導入したことなどは評価している。

 しかし、FITの法案が成立した後、二年以上も経過していながら、その先に描かれているはずのベストミックスの姿を示していない。あるいは、示してしないこと自体に、政策的に何かが欠けているといわざるを得ない。質問にあるように、比較的建設に向いた場所が減ってくることを、多くの関係者が予想し、発言する段階に至るまで、こうした課題に対する政策が示されていないことが問題だと感じている。

 本来ならば、太陽光、風力、バイオマス、水力、地熱といった再生可能エネルギーを含めたベストミックスの姿を、2030年、2040年、2050年といった10年単位で掲げ、具体的なエネルギー総量と比率から、どの電源をどのように開発すべきなのかが決まり、そのために必要な政策が定まってくるはずである。こうした認識の中で議論すべきテーマだと感じている。

 太陽光発電の場合、既存の電源に対して1kW当たりの発電コストが高いという課題がある。長期にわたるさまざまな電源の開発という位置づけの中で、この課題を克服しながら開発するために、適切な固定買取価格を定め、風力発電や水力発電、地熱発電との最適なバランスを築き上げる政策を実現してほしい。

 懸念しているのは、こうした視点による数値目標がないままに、経済産業省の調達価格等算定委員会への発電事業者による報告を基に買取価格を定めていると、太陽光発電に比較的向く場所が減っていくために、1kW当たりの単価が下がらない可能性があり、買取価格も下がらなくてよいという議論になる可能性があることだ。

 1kW当たりの単価が下がらない恐れがあるのは、全体のコストに占める工事費や造成費の比率が高まり、太陽光パネルなどの調達費が下がっても、結局は全体のコストがあまり下がらないという事態が容易に想像できるからである。

 買取価格が下がらないというのは、SBエナジーを含む発電事業者から見ると、採算面では助かるが、将来の日本におけるエネルギーのベストミックスの姿を描くという視点から見ると、ミスリードになりかねない。

 ドイツでも、固定価格買取制度の賦課金(サーチャージ)の高さが議論になっている。今後の日本でも、買取価格が高止まりするかもしれない。その実態として、賦課金が太陽光発電そのものではなく、工事費や造成費に当てられ、それを国民があまねく負担しているという状況は、避けなければならない。

 メガソーラー事業者は、企業の事業であり、自社の利益を最大化するために、買取価格は高い方が良いに決まっている。しかし、ソフトバンクグループの取り組みは、東日本大震災を機に、通信事業者として長期的に日本の電力に貢献していくという決意から始まっており、単に収益を上げれば良いとは考えていない。だから、政策の本質を見抜き、それが危ないと思ったら、危ないと言う。このような発言をする太陽光発電事業者はいないと思うが、買取価格の適正な値下げは当然のことだと思う。