極端な“過積載”でPCSの設備利用率を上げる

 一方、積雪、少ない日射、処分場跡地という“3重苦”にいかに対処したのか。EPC(設計・調達・建設)サービスを担当したJFEエンジニアリング・発電プラント事業部の渡部朝史氏は、「公募の条件だった年間175万kWh以上の発電量を確保し、コストを抑えて事業性を保つのはかなりハードルが高かった」と振り返る。最大出力1.5MWの太陽光パネルで年間175万kWh以上を発電するには、設備利用率は日本全国の平均である12%を超えることになる。秋田市の場合、逆に設備利用率は11%を超えるのがやっとと見込まれた。

 そこで、発電量を増やすため、「過積載」と呼ばれる手法を使用した。秋田市のメガソーラーは、最大出力1.5MWのパワーコンディショナー(PCS)を設置しているため、売電できる出力は1.5MWが最大になる。しかし、敷地内には最大出力2.2MW分もの太陽光パネルを設置した。このようにPCSの容量以上の太陽光パネルを設置することを過積載と呼ぶ。過積載にすると好天で日射量が十分にある場合、PCSの容量を超えた発電電力は売電できないので無駄になる。ただ、夕方など日射量が弱くなってもパネルが多いためにPCSの最大出力に近い発電量を維持できる。つまりPCSの設備利用率を上げられる利点がある。過積載を採用したメガソーラーは珍しくないが、太陽光パネルとPCSの出力差がここまで大きい事例は珍しい。「もう一台PCSを増やして容量を1.98MWにすれば売電量は多少増えるが、設備コストが上がってしまう。費用対効果のバランスを何度もシミュレーションしていまのPCSと太陽光パネルの出力に決めた」(渡部氏)という。

 積雪対策としては、パネルを30度に傾けて設置し、パネルの最低地上高を1.5mまで上げた。雪がパネルに積もらないよう、滑り落とすことを狙った。だが、30度に傾けると朝夕に日が傾くと影が長くなる。この影が隣のパネルにかからないように間隔を空けると所定の枚数が設置できない。そこで、地面に近いパネルの1列には影がかかることを前提に設計した。地面に近いパネルを平行に直列配線して1つの回路にした。そのため下側のパネルに影がかかり出力が落ちても、その影響を受けずに上側のパネルが発電できる。

 また、造成工事に制限のある最終処分場跡地にメガソーラーを建てるため、斜面部分に「三脚型架台」を採用した。長さ4mのパイプ4本を40~45度の角度で地面に放射状に突き刺し、地上に突き出た部分にパネルを載せる支柱を接続金具で固定した。地下2mまで斜めに差し込んだことで、風力による引っ張りにも耐える強度が得られたという。

図●太陽光パネルとパワーコンディショナ―(PCS)
パネルはハンファ製の多結晶シリコン太陽電池、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)を採用した(出所:日経BP社)
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●施設概要
所在地 秋田市河辺豊成字虚空蔵大台滝1番地1ほか
事業主体 秋田市
土地所有者 秋田市
出力 1.5MW(太陽光パネルの出力2.2MW)
リース事業者 東京センチュリーリース
EPC(設計・調達・建設) JFEエンジニアリング、瀬下建設工業
O&M(運用・保守) JFEエンジニアリング、瀬下建設工業
売電開始 2013年10月1日
太陽光パネル 韓国ハンファグループ製
パワーコンディショナー(PCS) 東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製