オリックス 執行役 事業投資本部長 錦織 雄一氏(撮影:清水 盟貴)
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 第4回までは、メガソーラー(大規模太陽光発電所)ビジネスの事業モデルや、関連するプレーヤーの役割、事業のリスクとその解消策などを紹介してきた。第5回となる今回からは、日本国内で実際にメガソーラービジネスを推進している企業のキーマンへのインタビューを紹介する。今回は、オリックス 執行役 事業投資本部長の錦織 雄一氏に、現状や今後の展望などを聞いた。

――6月28日の発表時点で、開発に着手している地上設置型のメガソーラーが28件、この合計最大出力が約143MWあり、このほか、企業や自治体などが保有する大型の建物の屋根を借りた、屋根設置型の発電所が49件、この合計最大出力が約27MWあるなど、着々と発電所の件数を積み重ねている。現状や、ここまで迅速に開発プロジェクトをまとめ上げることができた秘訣は。

錦織氏 約2年前に、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が施行される前から、準備を進めてきた。2012年7月にFITの導入が決定したことから、地上設置型のメガソーラーでは約2MWを中心に、また、大型の建物の屋根の上を借りて、そこを太陽光発電所とする屋根設置型の発電所では、数百kWの小規模な発電所を中心に、開発に注力してきた。

 さらに、オリックスグループの顧客の中には、顧客自身で太陽光パネルを設置して売電に取り組みたいという要望もある。こうした顧客には、太陽光パネルの販売から設置、電力会社への系統連系までをセットにしてサービスを展開している。この三つの方式で、太陽光発電所の事業を展開している。

 こうした太陽光発電の事業は、国内の豊富な営業要員を活用したものである。自社の営業、顧客、取引先から集まる情報を基に、太陽光発電所を開発している。取引先からの情報には、太陽光パネルメーカーによる地主の紹介もある。また、自治体の公募に応募することで決定した発電所もある。

 大規模発電所に取り組むには、一定の専門性が必要になる。そこで、今後の展開をにらんで、今年10月に専門部署を増員して、より活発に取り組んでいく。地上設置型のメガソーラーの担当者は約10人増やして約35人に、屋根設置型の担当者は約20人、太陽光発電システム販売は約25人、地熱発電・風力発電は約5人増やして約10人とした。このほかに、前述の全国の営業拠点の担当者が、通常の営業活動の中で提案している。

 6月に発表した実績と見込みの数値は、かなり堅めに見積もったものである。ここに盛り込まなかった案件にも、契約を目前に控えた発電所の計画などがある。現時点で、確実に実現できるだろうと想定している発電所は、地上設置型のメガソーラーが約40件で、合計最大出力が約220MW、屋根設置型が約90件で、合計最大出力が約60MWと、合計で300MW弱に達するメドがついている。

 オリックスは、「早期に地上設置型メガソーラーで合計最大出力300MWを目指す」と宣言した。ほぼそのレベルに達しつつある。専門部署の陣容を増強したことで、今後も引き続き増やしていきたい。

――今後の展望は。

錦織氏 固定買取価格は、2012年度が税抜きで40円、2013年度は同36円となっているが、2014年度以降も買取価格は下がる傾向にあると想定している。

 また、参入企業が増えて、競争が激しくなってきた上に、メガソーラーを比較的簡単に建設しやすい土地については、開発が進んで徐々に残り少なくなってくるだろう。このため、複雑な土木工事が必要になったり、電力会社の高圧送電網との接続点までの距離が長いといった、建設上の制約が多い開発プロジェクトが増えてくると予想している。こうした開発では、従来の開発に比べると、収益性が劣る可能性があるが、引き続き取り組んでいきたい。

 さらに、初年度の買取価格40円で発電所の建設の設備認定を受けながら、開発のメドが立っていないプロジェクトが多く残されている。約20GW分のうち約7割が、具体的な開発計画の不備や、見積もりが甘いために実際の開発が難しいといった理由から、こうした状況にあるといわれている。

 こうした案件について、紹介や相談を受けるケースが増えてきており、実現できる可能性が高いものについては、開発を引き継ぐ場面も出てくるだろう。ただし、検討していく中で、実現が難しい案件も多いという印象も抱いている。

 メガソーラービジネスは、発電所を完成させるまでの資金計画や、その前の事業計画にいくつか課題があるケースもあるものの、完成して実際に売電を始めてからは、ほとんどの場合、良いアセット(資産)になる。

 メガソーラーの開発にとって、あと一年間が旬の時期だと考えている。それ以降、計画が皆無となることはないだろうが、例えば、工事のコストを想定すると、東北地方の復興の他に、今後は2020年に開催される東京オリンピックも控えており、工事のコストが大きく下がるとは想定しづらい。

 現在のメガソーラーの建設コストは、大まかに工事で約1/3、太陽光パネルで約1/3、その他で約1/3である。

 コストを下げる要因として、太陽光パネルを海外製、主に中国製に切り替える動きが出てくるかもしれない。もし、現在の価格レベルで国内市場に浸透してくれば、メガソーラーの建設コストの低下要因にはなる。ただし、全体のコストの約1/3の中で、何割か下がるというレベルであり、全体のコスト削減に大きく貢献できるとは限らない。