高度経済成長期以来、日本では増え続ける人口の受け皿として、数多くの郊外型の分譲住宅地が開発されてきた。新たな街が開発されれば、新たな人や家族が住み、新たな近所づきあいが始まる。こんな日本の地域社会がいつしか変わり、近所づきあいが希薄化しつつある。それは大都市圏だけでなく、地方の郊外型の分譲住宅地にまで及んでいるとも聞かれる。その一方で、2011年3月に起きた東日本大震災以降、こうした近所づきあいを基盤にした、地域のコミュニティの重要性が見直され始めている。

 そんな地方の郊外型の分譲住宅地の隣に建設されたメガソーラー(大規模太陽光発電所)がある。三重交通グループホールディングスの子会社、三交不動産(三重県津市)が建設した、「伊勢二見メガソーラー光の街」である(図1~2)。三交不動産は、三重交通が運営するバス路線の沿線を中心に、不動産の開発に取り組んできた企業である。

分譲住宅地の商業利用地に建設

 このメガソーラーに隣接する分譲住宅地「光の街」は、二見浦駅から車で約10分間の丘の上にある。1970年代から土地の買収を始め、1997年に分譲が始まった。全部で606戸の住宅地が用意され、現在、約300戸に入居済みとなっている。

 そして、分譲住宅地の開発の当初から、北側を住宅地とし、南型の約10ヘクタールの土地には、住人の生活に関連する商業サービスの施設を建設する計画としていた。その対象として、病院やスーパーマーケットといった候補が浮かんだものの、該当する事業者が進出を決断するまでには至らない状況が続き、遊休地のまま時が過ぎていった。

 事態が変わる契機となったのは、東日本大震災だった。東京電力の管内において、電力不足が現実のものとなった。エネルギーへの関心がかつてないほどに高まる中、再生可能エネルギーの固定価格買取制度がスタートすることになった。

 電力の供給という、人間生活の基礎を支えるサービス施設を建設し、平常時は売電し、非常時には地域の電力供給源として備えることができないのだろうか。しかも、光の街の南側にあるのは、三重県の広域防災拠点である。三重県知事の鈴木英敬氏が、経済産業省に在籍時代、再生可能エネルギーを担当していたことで強い思い入れもあり、「三重県が再エネの推進役を担う」と宣言したことも、後押しとなった。

図1●伊勢二見メガソーラー光の街の航空写真
(出所:三交不動産)
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図2●分譲住宅地の隣に建設した
(出所:三交不動産)
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