再保険などを組み合わせて事業を成立

 こうしたリスクに対して、メガソーラービジネスのプレーヤーは、どのような対策をとっているのだろうか。

 例えば、日射量に対するリスクの例を紹介する。日照時間が長く、日射量が多く、さらに、造成が必要なく、送電線が隣接しているような、メガソーラーにとっての好適地ほど、早く建設が進むとみられる。そこで、今後、出てくるメガソーラーの建設候補地での事業では、例えば、日照時間や日射量を多少、犠牲にし、別の観点からコストを削減することで採算性を上げるといった選択が増えてくるだろう。

 このような場合、どこにコスト削減を見出すのか。太陽光パネルの選択に活路を見出すメガソーラー事業も増えるとみられる。アジア製を中心とした、コストの安い太陽光パネルを選択した場合、もし20年間という長期にわたって発電し続けることができなくなったら、発電できないパネルはそのまま収益の損失を意味する。このため、太陽光パネルの長期信頼性とメーカー自体の安全性が問われてくる。メーカーの安全性とは、安定した財務基盤に基づく事業の継続性を指す。

 プロジェクトファイナンスによる融資を依頼する場合、太陽光パネルなど主要設備の選択に関して、金融機関からの条件は厳しさを増すだろう。買取価格が今後、徐々に減額されると見られる中で、建設コストの低減を狙って海外製の低価格パネルを使おうとした時に、金融機関が融資に応じない可能性もある。

 そこで、注目されているのが、再保険である。再保険会社が認定したメーカーの太陽光パネルを採用していれば、もし、太陽光パネル・メーカーが経営破たんした後などに、出力が規定以上に下がる、太陽光パネルが破損するといった、太陽光パネルの交換が必要になった場合、他のメーカーの太陽光パネルに取り換えに要する費用を補償するといった保険が提供されている。例えば、ミュンヘン再保険が太陽光パネル・メーカーと契約している保険商品などがある。ミュンヘン再保険は、契約したメーカーの太陽光パネルの品質をチェックし、ソーラーフロンティアや中国などアジアのメーカーなどの一部が対象となっている。

 国内の大手保険会社もメガソーラーを維持管理する際のリスクを低減する商品を開発している。保険でカバーできるリスクは、(1)火災、落雷など不測かつ突発的な事故による物的損害、(2)地震または噴火による物的損壊(3)火災などの事故により、財物損壊を受けた場合の利益の損失、(4)メガソーラーの管理などに起因して他人に損害を与えた場合――などが代表的だ。三井住友海上火災保険の鈴木修一・商品部火災新種保険部企画チーム課長によると、「ほとんどのメガソーラー事業者は、(1)の(4)に備えた保険を契約しているが、(2)と(3)の保険に関しては契約を見送る事業者もある」という。

 同社では、(1)~(4)に、日照不足による発電量の減少リスクを軽減する「天候デリバティブ」を加えた「メガソーラー総合補償プラン」を商品化した。「メガソーラーのリスク全体をカバーするには複数の保険を組み合わせることになるが、総合補償プランのメニューを選択することで、ワンストップでサービスする」(鈴木課長)のが狙いだ。

 ただ、こうした保険会社の一般的な保険には、地震に伴う津波などで太陽光パネルや設備が損壊した場合、修理が完了するまでの逸失利益は補償されない。従って、津波のリスクが高い沿岸域では、災害による事業リスクが相対的に高いことになる。

 次回からは、メガソーラー事業を推進している企業のキーマンにインタビューし、メガソーラービジネスの現状や課題、今後の展望を問う。