「3D映像の視聴に適したものを追い求めた結果だ」―。ソニーで商品企画に携わる森英樹氏は、有機ELパネル採用のHMD「HMZ-T1」を開発した経緯をそう語る。2012年10月に発売した後継機「HMZ-T2」も好調で、「HMZ-T1を上回るペースで売れている」(同社)という。
ソニーのHMDは、両眼・大型・非透過型の、いわゆる「没入型」である。映像の視野角は45度で、表示される映像は20m先で750型に相当する。光ディスク装置などの映像再生機と、HMD用に映像を生成する「プロセッサーユニット」をケーブルで接続する。さらに、同ユニットにHMDをケーブルで接続して用いる。
有機ELパネルを採用したのは、映像のコントラスト比が高く、「黒の沈みがよいから」(森氏)である。ソニーの電子ビュー・ファインダー(EVF)向けの有機ELパネルを基に、画素数を1280×720に増やした。同パネルを左目用と右目用に搭載して立体視を可能にした。
HMZ-T2では、HMZ-T1と比べて装着性を高めた。軽量化に加えて、HMDを頭に固定させるために額と密着させる部分(額当て)の材料や形状を変えている(図1)。HMZ-T1ではHMDの重さは約420gだったが、HMZ-T2では約330gにした。HMZ-T1にあったヘッドホン部をなくした上、側頭部を薄くするなどして軽量化している。ヘッドホンを外した主な理由は、ユーザーが「自分の好きなヘッドホンを利用したい」との声が多かったためである。