広島県庄原市の「庄原太陽光発電所」は、国内初の有限責任事業組合(LLP)制度を活用したメガソーラー(大規模太陽光発電所)。広島県と中国電力グループが出資した。20年間の収益を9億円と見込み、別会計にして省エネなどの活動に充てる。厳しい気候に配慮して、太陽光パネルやパワーコンディショナーなど、品質と耐久性を重視して機種を選択した。

 広島県の北西に位置する庄原市は、中国山地の山々に囲まれた河川沿いに複数の市街地が点在する。市役所から車で10分ほど、主要道路から工業団地に通じる坂を上り切ると、整然と並べられた太陽光パネルが目に入る。10月10日、1960kW(1.96MW)のメガソーラー「庄原太陽光発電所」の竣工式が開催された。県が造成した工業用地だが、企業に使われずに空き地となっていた。背後にある山道を登ると、灌木の繁る緑の稜線をバックに青いメガソーラーの全景を眺めることができる。

国内初のLLP方式のメガソーラー

 「子供たちが未来の環境・エネルギーを考える環境学習の新たな拠点として、地域の皆さまにも大いに活用していただくことを期待している」。開会式に出席した広島県の湯崎英彦知事は、こう祝辞を述べた。知事のほか、庄原市長や市議会議員が招待された。実は、今回の竣工式では、湯崎県知事は招待客ではなく、“主催者”の一員として参加した。

 というのは、「庄原太陽光発電所」には、広島県も出資し発電事業者となっているのだ。同発電所は、広島県などが出資する有限責任事業組合(LLP)「ひろしま再生可能エネルギー推進有限責任組合」が事業主体になる。自治体が出資したLLP方式によるメガソーラー事業としては全国で初めてのケースになる。今後、同LLPは庄原市のサイトを含めて県内3カ所で、計6.6MWのメガソーラー事業を展開する計画だ。県ではこれを第1期工事と考えており、今後さらに第2期として約10MW分のメガソーラー事業を目指している。

 広島県環境県民局環境政策課の岡田誠司・再生可能エネルギー推進担当主幹は、「県所有地を民間企業に貸してメガソーラー事業を進めた場合、売電による収益は民間企業に属し、県民は電気代が上がるだけになる。県自らが事業主体となり、収益を県民に還元できる方法を模索するなかで、LLPという方式に行きついた」と話す。

10月10日に開催した竣工式には、広島県の湯崎知事が発電事業の当事者として参加した(出所:広島県)
[画像のクリックで拡大表示]