10.5GHzやMIMOで高精度に

 これに対して、九州大学は10.5GHz帯の電波を利用した心拍測定技術の開発を進めている(図5)。10.5GHzを選んだのは、「2.4GHzよりも波長が短く、小型化や分解能(精度)の点で有利なため」(九州大学の間瀬氏)とする。

図5 10.5GHzを利用して運転者の心拍やストレス状態を測定
九州大学は、10.5GHzの無線電波を利用して、運転者の心拍やストレス状態を非接触で測定する技術を開発している(a)。(b)は同技術とECGによってそれぞれ測定した心拍変動指標(ストレス状態を判断する指標)の相関を示した。(図:(b)は九州大学の資料を基に本誌が作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 もともとは、自動車メーカーと共同で、運転者のストレス状態などを測定するために始まった研究だという。ストレス状態の算出には、より高い心拍データの精度が求められる。そこで、10.5GHzの採用に加え、呼吸成分の影響が大きい胸部ではなく運転中に比較的動きが少ない左足の太ももでの測定や、独自のアルゴリズムを開発することなどで、精度を高めているという(図5(b))。

 一方、複数のアンテナを使って高速なデータ伝送を実現するMIMO(multiple input multiple output)を利用することで、さらに感度を高める研究をしているのが岩手大学だ(図6)。送信と受信をそれぞれ2チャネルにした実験では、1チャネルずつの場合に比べて呼吸成分の周波数の検出感度が8.3dB高まる結果が出ているという。こうしたMIMOの利用については、前出のアルプス電気も「大きさの点でデメリットはあるが、精度向上のために検討する可能性はある」(同社の佐藤氏)とする。

図6 MIMOを利用して検出感度を高める
岩手大学は、無線電波による心拍や呼吸の非接触測定において、MIMOを用いて検出感度を高める技術を開発している(a)。同大学の実験によれば、呼吸成分の周波数の検出感度が8.3dB高まる結果が出ている(b)。(図:(b)は岩手大学の資料を基に本誌が作成)
[画像のクリックで拡大表示]