心弾動図に着目

 (3)の加速度センサを活用した心拍測定技術を開発するのは、村田製作所だ。同社は2013年4月に開催された展示会「MEDTEC 2013」において、体重計型の装置やベッドに乗る(寝る)だけで心拍を測定するデモを実演した(図3)。心弾動図(BCG、ballistocardiogram)に着目した測定技術である。

図3 “体重計”に乗るだけで心拍測定
村田製作所が開発した心拍測定技術は、“体重計”に乗るだけで測れるのが特徴(a)。心弾動図「BCG」を傾斜センサで検知する仕組み(b)。同センサを搭載したモジュールとして機器メーカーに提供していく予定である(c)。(図:(b)と(c)は村田製作所の資料を基に本誌が作成)
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 心弾動図は、心臓の物理的な動きに伴って生じるわずかな体の動きのこと。図3(b)のように、心臓の電気的な動きである心電図に対して、少し遅れてピークが現れる。この動きを、体重計型の装置やベッドに搭載した加速度センサを用いて検出し、心拍を測定しようとするものだ。

 BCGは極めて細かい動きであるため、「一般的な加速度センサに比べて約50倍の精度」(村田製作所 センサ事業部 第2センサ商品部 FAE課の木村正幸氏)を備えるセンサを利用した。具体的には、重力加速度1Gの1/1000の小さな振動を検知できるという。同社が傾斜センサと呼ぶもので、2012年1月に買収したフィンランドVTI Technologies社(現・Murata Electronics社)製。ショベルローダーなどの建機や医療機器、航空機用計測システムなどに利用されているセンサである。

 展示会の実演では、測定した心拍の間隔からストレスの度合いを提示するデモも披露した。村田製作所は、傾斜センサを搭載したモジュールとして機器メーカーなどに提供していく考え。2013年中には機器メーカーと実証実験を進め、2014年に実用化することを狙う。