生体情報測定の姿が、エレクトロニクス関連技術の活用によってガラリと変わりそうだ。これまで生体情報の測定といえば、患者の動きを拘束したり、電極を体に貼り付けたり、あるいは患者に苦痛や不快感を与えたりするのが一般的だった。例えば、カフ(圧迫帯)を腕に巻き付けての血圧測定や、電極を体に貼り付ける心電図測定は、ほとんどの読者が経験したことがあるだろう。筆者自身がそうであるように、カフで腕を圧迫されることや電極を体に貼り付けられることに対して、ストレスや緊張を感じる人も少なくないはずだ。

 これに対して今、「非接触」「非侵襲」で生体情報を測定する技術の開発が、にわかに活発になってきた(図1)。測定されていることを被験者(患者)がほとんど意識することなく、測定そのものへのストレスなどから患者を解放する─。このような技術が相次いで登場しているのだ。

非侵襲=痛みや苦痛などを与えないこと。

図1 エレクトロニクス技術の活用で「非接触」「非侵襲」の時代へ
生体情報の測定は、これまで「拘束」「電極の貼り付け」「圧迫」といった状態を強いられてきたが、「非接触」「非侵襲」を実現する技術開発の事例が相次いでいる。
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 例えば、日本大学は2012年11月にドイツで開催された世界最大の医療機器展示会「MEDICA 2012」において、指を触れるだけで血圧を測定できる技術を展示。来場者の大きな注目を集めた。

 一方、トヨタ自動車は2013年3月、自動車のステアリングを利用して運転者の血圧を推定する技術を「第77回日本循環器学会学術集会」にデンソー、日本医科大学と共同で展示した。「自動車を毎日運転する人なら、普通にステアリングを握っているだけで日々の血圧を測定し、管理できるようになる」(トヨタ自動車)。

 さらに、富士通研究所は2013年3月、顔の動画からリアルタイムに脈拍を測定する技術の開発を発表した。パソコンのモニターにWebカメラを装着し、必要なソフトウエアをパソコンにインストールしておけば、「オフィスでいつも通りパソコン作業をするだけで、脈拍の変化をモニタリングできるようになる」(同社)というのだ。これらは、あくまで非接触・非侵襲で生体情報を測定する開発例の一端にすぎない。