今後の広がりは農家の資金調達と行政の裁量がカギ

 ソーラーシェアリングの今後の広がりは、農家による資金調達と、農林水産省をはじめとする行政の裁量にかかっている。

 資金調達については、導入するシステムが生み出す売上高が予想しやすい売電事業に対して、気象の変動などの影響を受けやすい農業の部分の予想が難しい、農地を担保に設定できない制約などによって、金融機関による融資が実現しない恐れがあるという。

 九電工によると、初期投資として、一般的なメガソーラーで1kW当たり約28万円なのに対し、ソーラーシェアリングでは約35~40万円かかるという。田畑ならではの柔らかい地盤に柱を建てるための基礎工事のコスト、約4mの高さに太陽光パネルを設置するための架台のコスト、田畑は送電線まで遠い場所にあることが多く、系統連系に必要なコストが膨らみがちなのが原因である。この投資を、一般的なメガソーラーでは7~8年間で回収する計画なのに対し、ソーラーシェアリングでは14~15年間かけて回収することになるという。さらに、架台が建築基準法に準じた建物と規定された場合、耐震性などの基準を満たすためのコストがさらにかかってしまう。

 また、行政の裁量については、農地転用の許可を渋る場合があるといった課題がある。ただし、この点は、今後、農作物の収穫の実績などによって、変わってくる期待もある。

放し飼いの養鶏場にも適用

 ルネサンスエコファームでは、今回の発電所の隣接地に、放し飼いの養鶏場と太陽光発電によるソーラーシェアリングシステムも稼働させている(図4)。

図4●隣接地には、放し飼いの養鶏場とのソーラーシェアリングシステムを稼働(撮影:日経BP)
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 コの字型に太陽光パネルを設置した屋根の下に、金網で囲った養鶏場があり、そこにニワトリを放し飼いしている。こちらの最大出力は9.9kWである。また、中にニワトリが飼われていることから、イタチなどによる襲撃への対策として、基礎を高く築いた。

 卵を産まなくなりつつあるニワトリを1羽約1000円で購入し、飼育している(図5)。ニワトリの餌には、ルネサンスエコファームが経営するうどん店で、これまでごみ処理されていた食品残さを餌とし、有機廃棄物の有効活用を目指している。

図5●卵を産まなくなったニワトリが、放し飼いによって、再度卵を産むように(撮影:日経BP)
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 養鶏をはじめたところ、伸び伸びとした環境が良いのか、また卵を産み始めた。放し飼いのニワトリの卵として付加価値が付き、1個約30円で販売されている。

施設の概要
施設名 ソーラーシェアリングシステム果樹園
住所 山口県防府市右田
事業者 ルネサンスエコファーム
売電開始日 2013年6月12日
発電容量 250.8kW
施工会社 九電工
太陽光パネル 韓国Hanwha SolarOne社製
パワーコンディショナー 安川電機製
架台 九電工