川崎市にある浮島は、京浜工業地帯の一角にある、海に面した埋立地。日本の経済成長を長く支えてきた工場の集積地であり、現在でも多くの産業の主力工場が操業している。重厚な鉄の塊、密集するパイプや煙突といった、いかにも工場らしい風景が続く地域として、最近では、工場の景観を愛好する、いわゆる「工場萌え」たちの撮影スポットとしても知られるようになった。屋形船による工場夜景クルーズなどでも必須の場所という。

 このような、重化学工業の工場群の中という、本来ならメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設に必要な広い空き地がありそうもない地域に立地するのが、「浮島太陽光発電所」である(図1)。一般廃棄物処理場として使われ、20年間の浄化期間中の土地の有効活用として建設された。最大出力は7MW、発電開始は2011年8月と、この規模としては国内で最も早く稼働した発電所といえる。

図1●浮島太陽光発電所(撮影:日経BPクリーンテック研究所)
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川崎市と東京電力の共同事業

 浮島太陽光発電所は、隣接する川崎市の広報・教育用施設「かわさきエコ暮らし未来館」とともに、川崎市と東京電力による共同事業として建設された。かわさきエコ暮らし未来館には、太陽光発電などを学ぶための展示や、隣に広がるメガソーラーを一望できる展望台がある。

 なぜ、広報用施設まで一体化した共同事業なのか。川崎市によると、メガソーラーまで合わせて、再生可能エネルギーの導入をはじめとする地球環境に配慮した施策の実行と、その取り組みの浸透、普及や啓発にも重点を置いているからだという。どうしても電力消費量や二酸化炭素(CO2)排出量が多くなりがちな工業都市ならではの取り組みといえる。両者の共同事業には、浮島太陽光発電所と広報・教育用施設のほか、同じ埋立地である扇島に建設されたメガソーラー、扇島太陽光発電所まで含まれている。

 こうした面から見ると、浮島の立地は優れているという。首都圏などからの交通アクセスが良く、多くの見学者が訪れやすい。さらに、羽田空港と海を挟んで向かい合う位置にあることも都合が良い。空港から、着陸間近の飛行機から、メガソーラーが見えるからである。

 浮島太陽光発電所は、川崎市が土地を貸与し、東京電力(東電)が発電設備を所有する。東電が発電所の設計・調達・建設を一括して担うEPC事業から、運用、保守までを担当している。2011年8月に稼働し、発電した電力はすべて東電の送電網に系統連系し、同社の電力サービスに使われる。