シャープのスマホのトレードマークとなった「IGZO」
シャープのスマホのトレードマークとなった「IGZO」
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IGZOを搭載したシャープ製タブレット端末「AQUOS PAD」
IGZOを搭載したシャープ製タブレット端末「AQUOS PAD」
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 高精細で美しい液晶ディスプレイを備え、しかも何日も充電せずに使い続けられる電池長持ちのスマートフォン(スマホ)。その実現に貢献した技術が『IGZO(InGaZnO)』である。

 シャープが、世界に先駆けて2012年に実用化に成功した。同社はIGZO技術を採用した液晶ディスプレイを同社のスマホに搭載し、「IGZO(イグゾー)モデル」として発売した。この端末はディスプレイの美しさや、丸2日間以上充電せずに使うことができるという特徴が受けて、ヒット商品となっている。シャープは2014年度以降に発売するスマホとタブレット端末のすべてに、IGZOを搭載する意向だ。

 IGZO技術が持つインパクトはこれにとどまらない。8K(スーパーハイビジョン)と呼ばれる超高精細の大画面ディスプレイや、大画面の有機ELディスプレイ、さらにはフレキシブル・ディスプレイなど、従来は実現が難しいとされてきた革新的なディスプレイ技術の実現手段になると期待されている。

 そもそもIGZOとは、「酸化物半導体」と呼ばれる材料の一種。インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、酸素(O)から成る化合物「In-Ga-Zn-O」の略称である。そしてこの材料は、ディスプレイ材料の“王者”として長く君臨してきたSi(シリコン)を置き換える革新的材料として、注目を集めている。

 中でもIGZOは、各種の高精細ディスプレイを動作(駆動)させるために必要な「TFT(薄膜トランジスタ)」と呼ばれる素子の材料として、有望視されてきた。東京工業大学教授で、ノーベル賞候補に名前が挙がることもある細野秀雄氏のグループが、TFTへの応用研究で世界をリードしてきた経緯がある。

 それでは、なぜIGZOという材料が注目を集めているのか。それは、これまでのTFTに用いられてきた「アモルファスSi」と呼ばれる材料に比べて、材料中を動く「電子」の移動速度が速いからだ。結果として、TFTの動作速度(駆動能力)を高めることができ、高精細の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイを低い消費電力で高速に駆動することができるようになる。

 さらに、IGZOには大型のガラス基板を使って安価にパネルを製造しやすいという特徴があり、高精細ディスプレイの低価格化にもつながる。

 この他、IGZOには透明であることや、樹脂などでできた柔らかい(フレキシブル)基板にTFTを製造できるといった、Siにはないユニークな特徴がある。このため、ペラペラで透明なシート上に高精細ディスプレイを搭載したり、半導体の集積回路(IC)を搭載したりするといった、新しい応用を生みだす可能性もあると期待されている。