大分臨海工業地帯は、重化学工業を中心に発展し、かつて“新産業都市の優等生”と言われた。その工業地帯がいま、日本で最大級のメガソーラー(大規模太陽光発電所)集積地に変貌しつつある。2014年春までに同工業地区内の出力は120MWを超える見込みで、大分市は、“新エネルギー都市の優等生”として、知られることになりそうだ。

図1●日揮みらいソーラーが運営するメガソーラー(出所:日揮)
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 その第一弾となるメガソーラーの起工式が2013年5月14日に行われた。発電所の名称は、「日産グリーンエナジーファームイン大分」。日産自動車が所有する約35haの工業用地に、約11万枚もの太陽光パネルを敷き詰め、最大出力26.5MWの電力を生み出す(図1)。2013年10月時点では、国内で稼働する最大級のメガソーラーになる。日産から土地を借り、発電事業を営むのは、日揮が100%出資して設立した特定目的会社(SPC)、日揮みらいソーラー(横浜市西区)だ。

国内初のメガソーラーのプロジェクトファイナンス

 大分市街から臨海産業道路を車で約30分。火力発電所の煙突を過ぎると左の車窓には大きな建物が見えなくなる。このあたりは、1970年代の造成工事によって完成した埋め立て地だが、取得した企業の中には、経済環境の変化から工場建設を断念し、遊休地となっていた。日産の土地もその1つで、日揮に貸すことでメガソーラーとして有効活用することになった。10度に傾斜して設置した太陽光パネルの高さは1m程度で、道路沿いの灌木に隠れて見えない。発電所内に入り、見学用の見晴台に上がると、敷き詰められたパネルが一面に見わたせる。遠くのパネルは青い地平線となって海の青さとなじんで見える。

 日揮は、プラントの設計・調達・建設を一括して引き受ける「EPC」で豊富な実績がある。だが、メガソーラー事業は初めての分野だった。そこで、メガソーラーに関して、資金調達からEPC、保守など、事業プロセスの各分野で実績の豊富な企業と組むことで、着実に竣工式までこぎつけた。

 まず、総事業費が約80億円規模になることから、「プロジェクトファイナンス」手法による資金調達を決断した。企業の信用力を前提に融資するコーポレートファイナンスと違い、同手法は、事業そのものに融資する。当時、国内でメガソーラー事業をプロジェクトファイナンスで資金調達した例はなかった。そこで、すでに海外でメガソーラー事業のプロジェクトファイナンスを手掛けていたみずほ銀行を幹事とし、大分銀行、豊和銀行、福岡銀行を加えたシンジケートを組んだ。また、EPCでは、太陽光発電システムに関する設計・施工で国内有数の実績を持つ四電エンジニアリング(高松市)と日揮プラントソリューション(横浜市港南区)がコンソーシアムを組むことにした。