「地方から始まる『技術立国ニッポン』の再生」企画 徳島編の第1弾として取り上げたナノミストテクノロジーズ。前編は、同社が強みとする超音波霧化分離技術の利点や、廃液処理と温泉濃縮、溶媒回収といった有望な応用先を紹介した。後編は、同技術をこうした用途に使おうとした経緯や海外展開、超音波霧化分離技術のさらなる可能性について同社に聞いた。

 ナノミストテクノロジーズ創業者で代表取締役社長の松浦一雄氏が超音波霧化分離技術を実用化したのは1999年と、2002年の同社創業前である。同社への出資者であり、創業200年を超える酒造メーカー、松浦酒造場での日本酒の生成工程で用いたのが始まりだ。日本酒の風味を落とさずに雑味をなくし、そしてアルコール濃度を高めるために、超音波霧化分離技術を用いた。「求められる技術水準はさほど高くなかった」と松浦氏は当時を振り返る。

米国法人を立ち上げ、医療分野に狙い

 次に、同技術の展開先として狙いを定めたのがバイオエタノールの濃縮であった。これも開発は順調に進んだが、バイオエタノールに対する市場の期待値が下火になったことで新たな応用先を探さざるを得なくなった。行き着いた先が前編で登場した廃液処理である。

 松浦氏によれば、超音波霧化分離技術を使う装置はナノミストテクノロジーズ以外に販売する企業はない。だが、研究開発レベルでは類似技術を利用した論文が国内外で出てきているという。海外からの引き合いもあり、2013年に米国法人を立ち上げた。

 米国法人を立ち上げるきっかけになったのが、「TOMODACHI東北チャレンジ」(米日カウンシル(USJC))で優勝したことだ。米国のベンチャー・キャピタリストなどにナノミストテクノロジーズの技術や効果が知られ、同社の知名度が一気に高まった。その結果、「米国法人をやらしてほしい」という打診があり、米国法人立ち上げにつながった。米国ではまず、医療分野に向けて薬液の溶媒回収装置を販売していく。

 ナノミストテクノロジーズはこれまで、廃液処理装置で中東から引き合いがあり、超音波霧化分離技術による装置をOEM生産したいという依頼がスペインから寄せられたことがあった。だが、本格的な海外展開は米国法人の立ち上げが初めてといえる。