液晶ディスプレイや有機ELディスプレイが、新たな進化を遂げている。表示装置にとどまらず、ユーザー・インタフェース装置として活躍できるようになったことで、応用範囲は、自動車のボディやテーブルなどにも広がっている。以下「ディスプレイ技術年鑑2013/有機ELの挑戦、新タッチ・パネルの衝撃」(日経エレクトロニクス編集、日経BP社2012年10月発行)から紹介する。(Tech-On!編集)

 FPDは今、二つのイノベーションが起こりつつある。一つは、映像表示の原理・構造から見直して、ディスプレイをもっと使いやすいものにする技術革新である。もう一つは、映像表示だけでなく、映像の入力や操作の機能も取り込む動きである。

 これらの技術革新によって、AV機器やIT機器だけでなく、クルマのボディーやテーブルなどさまざまな「面」に、タッチ入力機能を備えた新しいディスプレイが使われるようになる。近い将来、こうした新しいユーザー・インタフェースによって、新しいコミュニケーションが生まれる。

電卓からパソコン、ケータイ、テレビへ

 FPDの中心である液晶ディスプレイの世界初の応用製品が登場したのは、今から約40年前の1973年5月である。日本のシャープが、液晶ディスプレイを表示素子に使用した小型電卓を発売した。転機が訪れたのは、その15年後の1988年である。シャープが14型テレビ向けTFT液晶ディスプレイを発表した。これにより液晶の大型化の可能性が実証されたことで、日本の電機メーカーが一斉に大型投資へ走り出した。1990年代初頭にはTFT 液晶工場が日本で相次いで稼働し、液晶ディスプレイは一大産業として認められるようになる。

 その後、液晶ディスプレイは、ノート・パソコン、パソコン用モニター、携帯電話機、テレビに使われることによって、急速に普及した。市場規模は急拡大し、産業規模は10兆円を超えるようになった(図1)。

図1 FPD産業は10兆円規模へ拡大
出典:日経BP 社
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 こうした液晶ディスプレイの普及の背景には、重要なポイントがある。それは、機器の形を変えることで、新たな使い方を生み出し、生活を楽しく便利に、そしてコミュニケーションを円滑にしてきたことだ。