強化アクリル樹脂を採用

 コスト削減のメスは筐体だけでなく、さまざまな部分に入った。例えば、尿の勢いなどを検知するマイクロ波センサも変更した。当初は、ゴルフ・スイングの速度の測定に使われるマイクロ波センサを流用していた。精度は高いものの、大型で高価という課題があった。トイレッツにはやや“オーバースペック”だった。そこで、小型でかつ安価なマイクロ波センサに置き換えた。

 コスト削減にまい進する一方で、コスト増を招いてでも採用したものがある。ディスプレイ部の筐体材料に用いる強化アクリル樹脂だった。一般的なアクリル樹脂と比べて高価なものの、強固で防水性や耐熱性にも優れる。酔っ払った人がディスプレイを殴ったり、たばこの火を押し付けたりすることを想定しての対策だ。

 「コスト削減のために、強化アクリル樹脂の採用を断念する“誘惑”に駆られたこともある」。ハードウエア開発メンバーの東口元彦はそう振り返る。しかし、トイレッツを導入する店やユーザーのことを考慮して採用に踏み切った。=敬称略